四 河童に救われたこと
川にどぼんと落ちて、水しぶきが上がった。荒れ狂う川に流され、山賊どもも追いかけてはこれなかったが、今度は溺れてしまうかもしれなかった。
渦に巻き込まれ、濁流にもまれ、水面から顔を出したり沈んだりしながら、どんどん下流へと流されていく。水をたくさん飲んじまった。必死でもがいていると、水中で足首に痛みが走るのを感じた。
巨大な魚が噛みついたにちがいないと、喜兵衛は思った。水中に引きずり込まれながら、どれほど巨大な魚が自分に噛みついたのか見ようしたが、無理だった。
激しい流れと、足を引っ張る力に為す術もなかった。もうダメだとあきらめかけたとき、不意に喜兵衛は、自分の体が岸に引き上げられたのが分かった。
水を吐き出してゴホゴホ咳き込み、顔を拭ってから、あたりを見回すと、緑色の人影がぼんやりと見えた。一瞬、葉っぱを全身にくっつけているのかと思った。
ところがよく見てみると、なんとそいつらは河童じゃねえか。キュルキュル鳴いて、くちばしから尖った歯をのぞかせ、水かきからしずくを滴らせながら、喜兵衛を見下ろしていた。
──こいつ、おれを食うつもりだ!──喜兵衛は逃げ出そうとしたが、河童のほうがずっと速い。喜兵衛はひょいと担ぎ上げられてしまった。
必死で暴れても、まったく無駄だった。見た目よりずっと、緑の細い腕にはすごい力があった。
河童が走り出し、喜兵衛は生きた心地もせず、河童の肩の上でゆさゆさ揺られていた。どこへ連れていかれるんだろうかと不安でいると、急にどさっと硬い地面に落とされた。
そこは、川岸の岩場だった。平たくなっていて、その奥に洞窟のような穴がある。
河童が「キューッ!!」と鳴いた。すると、洞窟から次々に仲間たちが出てきた。
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