秘密の共有館

Rod-ルーズ

第1話

某ショップモールにて


(バレてないよな…大丈夫、ウィッグはズレてない)


ランジェリーショップには少し背が高いお客さんが下着を物色していた。見た目は女性の容姿しているが肩幅などの骨格をよく見てみるとソレは男性の体躯であり、店員からも身近にいる客からも男としてみられているだろう。


彼の名前は、糸花夏樹(いとはななつき)

普通の4年生大学を卒業した社会人1年目の介護士だ。

その彼が何故、グレーのプリーツスカート柄のワンピースに黄色のカーディガンを着て、ランジェリーショップにて、おもむろに女性用下着を物色しているのか。それは、女装こそ彼の趣味の1つなのだ。


(あ…これ、可愛い…これを買おう)


社会人になり、彼はやり場のないストレスの矛先を探していた。

当然、職場の人たちとの飲み会などでストレスは発散できてはいる。しかし、それは気休め程度で大きな変化はなかった。そんな中、とある休日。ネットサーフィンで時間を潰していたある日。SNSでコスプレをしている人の画像を見た。


(なんか、楽しそうだなぁ…)


それがこの道への扉を開くことになる。


すぐにネットでメイド服を購入し、家で着てみる事をした。その見た目は男が女の服を着ているだけのような姿。自分の思い描いていた姿ではなかったが、そのにはもう1人の自分と言えるだろう。

可愛いを目指している自分がいた。


そこからさ美意識も高まり、化粧品を買ってはメイクにハマり、体型を絞り….徐々に女装にのめり込んでいった。


「すみません…これ、ください…」


ピンクのブラと、淡い黄色のブラを持っていった


「いらっしゃいませー、こちら2点ですね。プレゼント用ですか?」


「え?あー…いえ、僕用なので大丈夫です…」


こんな会話を何度したことか。最初は汗を滝のようにかいていたけど、今は少し慣れてきたのか。いまは汗もあまりかかないようになった。


店員は不思議そうな表情で商品を包んでいるけど気にしないフリ…あくまでも自然体でいる事が女装を成功させる…っと思う。


その後、お会計を済ませた後お店を出て少しショッピングモール内を散策した。


(もう、夏物も出てきているだ…今年のトレンドは何になるんだろう…コスメも新調しないとな)


そんな事をぼぉーっと考えながら部屋着を買おうと入店すると後ろから聞いた覚えのある声を耳にした。

「え…?夏樹くん…?」


ふとした声に一度立ち止まった。聞き間違いもあるが、僕の下の名前。その聞き覚えのある声の向こうに振り向いた。


「い、伊藤さん…?」


そこにいたのは職場の女性上司、伊藤リーダーだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

秘密の共有館 Rod-ルーズ @BFTsinon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ