第2話 Stesmpunk and Sunlight of Southern Cross②
車でおよそ20分。
三人は、火星府のとある軍部基地の倉庫へと到着した。ちなみにコチャブには、慣れ親しんだサザンクロスで留守番してもらっている。
車から降り少し歩いた所で、エニフから連絡を受けたのだろうか、長身の美しいポニーテールの女性が立って待っていた。
「デネブさん!おはよう!」
「デネブ、おはよう」
エニフとアクルックスは同時に挨拶する。
「アクルックス、エニフ、おはよう。そして、初めまして。あなたがポラリス君ね」
女性はそう言って三人を歓迎する。
笑顔を向ける彼女には、羽が付いていた。
真っ白なレースのスカートの上に、銀の甲冑。目は青く、耳にはダイヤモンドをあしらった十字のピアス。真絹のように白い羽と輝くばかりの金髪。
その姿はまさしく、湖を美しく勇敢に翔ぶ白鳥を連想させた。
「紹介しよう。こちらは“
「初めまして。ミス・デネブ。僕はポラリスと言います。ベン・スチームマテリアル社で働いています。今日はスチームマテリアルを修理させて頂けると聞いてやって来ました。よろしくお願いします」
「デネブよ。“白鳥の剣”なんて仰々しい名前で呼ばれてるけど、気軽にデネブさんと呼んで頂戴ね」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
「よろしく」
「デネブ、今日はありがとう」
エニフが礼を述べた。
「良いのよ。むしろ溜まっていた機械の修理の仕事を一斉に出来て、こちらこそ助かってるわ。それより」
デネブはアクルックスに向き直る。
「アクルックス、エニフとは仲良くやってるかしら」
アクルックスは頷く。
「はい。仲良くやってますよ!……あ、でも強いて言えば師匠、俺が食べるはずだったパンを無断で食べたりするので、そこだけは直して欲しいです」
「呆れた」
笑いながらデネブが言う。
「あんたまだそんな子供じみた事していたの」
「うっさいなぁ」
エニフは困ったようにデネブに噛み付く。
どうやらデネブに頭が上がらないらしい。というより、デネブがエニフの事を上から見下ろしているような気がするのだが。
「あの、二人はどういった関係なんですか?」
ポラリスが質問し、それにデネブが応える。
「上司とその直属の部下よ。尤もエニフの剣は私の剣と互角かそれ以上はあるから、あくまで立場上よ。アクルックスの事も、彼女が弟子になってからよく知ってるわ」
エニフが続けて言う。
「”白鳥の剣”というのは、彼女が貰った“
アクルックスもそれに同意し頷く。
「デネブさんの剣は凄いんだ、俺にも色々教えてくれる。今の俺の剣士としての実力があるのは、デネブさんのお陰だよ」
「あら、そう言ってくれるなんて、できた子ね。弟子に貰っちゃおうかしら」
「えへへ。ありがとうデネブさん」
焦ったエニフが突っ込む。
「おい待て待て、変な事を吹き込むな。アクルックスは私の弟子だ」
「や〜ね分かってるわよ」
笑うデネブ。
からかわれて、エニフは眉を顰める。
アクルックスも少し笑いをこらえてニコニコしていた。
エニフが怪訝な顔をしながら言う
「――とまあこんな訳だ、ポラリス。取り敢えず話はこのくらいで、マテリアルはどこにあるのか見せて貰いに行こうか。」
「はい」
「OK。じゃあすぐ近くだから、ちょっと向こうへ移動してくれる?」
デネブの案内で、4人はとあるテントへと向かった。そこには、スチームマテリアルを入れたダンボール箱が渦高く積まれていた。
「うわ……結構ありますね。」
「でしょう?」
道中「言っておくけれど、結構あるわよ。だから、 いつまでとは言わないわ」と言われていたポラリスだったが、実際に目にすると結構な数のダンボールに入れられた備品が並んでいた。
蒸気銃、作戦立案のためのスチームプロジェクター、背負って移動する為のスチームボンベ、移動時に使う小型のスチームエンジンバイク――。
――こんなにあるとは思わなかった。さすがは軍の備品である
仕方がない。親方には話をつけてあるので、今日の所はできるだけ終わらせて、また後日残りを行うとしよう。そう思っていると、ふとエニフから声をかけられた。
「ポラリス、ちょっと良いかな。実は私も、スチームマテリアルについて少し興味があってね。君の仕事を見せて欲しいんだ。ただ見てるだけだと申し訳ないから、それでどうだろう。修理したものを拭く仕事で良いから、君と一緒にやらせて貰えないだろうか?」
「え、あ、いやいや、それじゃあエニフさんに申し訳ないですよ。そんな事やってもらうなんて」
「駄目かな。今朝のお詫びも含めて、少し君と話もしてみたいんだ」
ポラリスは少し考えた後
「そこまで言ってくださるなら、じゃあ、お願いします。親方には何とか言っておくので」
と返した。
「ありがとう」
「そうだ、それならポラリス君」
ふと、デネブが思いついて言う。
「せっかく今日天気なんだから、公園で修理したらどうかしら?私達も近くで居られるし、気持ち良いわよ?」
そう提案するデネブ。
「え、でもこれここの物ですよね。他の人に見つかったりしたらヤバくないですか?」
心配するポラリスにエニフとデネブはニコニコと、それも声を合わせて二人で言った。
『まあ、軍の備品だって分かる訳でもないし、大丈夫、大丈夫』
――本当に大丈夫なのかこれ。
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