第9話 ニコラスの最期
上空を飛翔する巨大な魔獣の周囲に青白い光と鋼色の光を放つ軌跡がそれぞれ二つ飛び回っていた。
すると二つの光の軌跡が巨大な魔獣の首を通過した途端、魔獣の首の一つが刎ね飛ばされた。
刎ね飛ばされた首は白い灰となって振り落ちる。しかしその直後刎ね飛ばされた首の段絵から肉が蠢き出して元の首の先端の顎に戻った。
「誰かが魔獣と応戦してる、のでしょうか?」
「そうみたいだな」
ミリアはネールと視界に映る状況を確認している。すると魔獣の九つの顎が王都の方を向いた。
「⁉」
その瞬間、ミリアは嫌な予感が奔った。
ミリアは握っている杖の先を傍にある
魔導人形へ向けた杖の先の魔鉱石が力強い輝きを放つ。それと同時に魔導人形から噴き出す
魔導人形六体から発せられる結界は依然と透明だが、その結界はより強固になる。その直後巨大な魔獣の顎から紅蓮の炎が吐き出される。
先程吐き出した紅蓮の炎と同じ、だがその火力は段違いだった。
ミリアが咄嗟に結界を強化しなければ今頃王都は結界ごと消し炭になっていた。
魔獣が吐き出す紅蓮の炎が止むと、ミリアは杖を両手でつかんだ。その直後ミリアは膝をついた。
「ミリア⁉」
膝をついたミリアにネールは声を出して駆け寄る。
ネールの目に映るミリアは息を切らして額からは汗を滲ませていた。
「無茶しすぎだ! 一人であの魔獣の炎を防ぐなんて!」
ネールはそう言うとつい
その声を聴いたミリアは呼吸を整えながらネールを見る。
「……咄嗟、でしたが、……何とか被害はなくて、良かったです」
ネールに向かって笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。その笑みは明らかに無理をしている事をネールはすぐに
「一度防げたとしてもこれ以上はミリアには無理だ」
ネールは思った事をそのまま伝える。
つい先程魔獣が吐き出した紅蓮の炎を防ぐので
しかし今この場で
ネールはそんな事を頭の中で考えているとミリアはネールを見て口を開く。
「ネールの力を、貸して下さい」
ミリアが口を開いて紡いだ言葉にネールは一瞬呆然とする。
「どういう事だ?」
ミリアの言葉にネールはその目的を尋ねる。すると息を整えたミリアはネールに説明する。
「ネールの動力源の魔鉱石の魔力を借りて結界を強化します」
ミリアの口から出された暗にネールは一瞬目を大きく見開いた。
「私の力だけでは到底結界を強化し続けられません。ですがネールの魔鉱石は聖剣の力があります。魔獣の攻撃を防ぐにはうってつけの力です。それに先程の結界の強化でちょっとした仕掛けもしました。それを成功させるにはネールの力が必要です」
ミリアの説明を聞いたネールあ呆然としていた表情をすぐに元の表情に戻す。
「それができたとしても、今のミリアじゃそれを維持し続ける事はできないだろ」
ネールは冷静に状況を分析してミリアが説明した手は無理だと告げる。すると、ミリアは支えにしている杖を軸に立ち上がるとネールの背後へ移動する。
「おい、わしの話を聞いて——」
「今は有事です! できるできないなんて後回しです! やるしかないんです!」
ミリアの
するとネールは何か吹っ切れたようなどこかすっきりした表情を浮かべる。
「……分かった。だが、ミリアが言い出したんだ。ちゃんとやり通せよ。わしはわしで集中する」
「言われなくても分かってます」
ネールの言葉にミリアは真剣な表情を浮かべたまま答える。そして杖の先を空に向けた。
するとネールの体が輝き出す。それと同時に杖の先の魔鉱石が輝き出す。その輝きは上空の結界へと届く。
上空を飛翔する巨大な魔獣は応戦している青白い光と鋼色の光の軌跡を狙って吐き出した紅蓮の炎は虚空を通り過ぎそのまま結界が張られた王都へ飛んでいく。
王都へ飛んでくる紅蓮の炎は結界に阻まれ王都へ一切届かない。
そしてまた応戦している光の軌跡を狙った魔獣の炎は狙いを外して王都へ落ちていく。その炎は結界に
ミリアの眉間にはしわが寄って見るからに苦しそうだった。
そんな状態を暫く続けているとミリアはついに地面に膝をついた。
ミリアが地面に膝をついた事を
ネールはネールで自身に内蔵されている魔鉱石の魔力をミリアに渡し続けるのに集中していた。
先程ミリアに言った言葉通りにネールはミリアが疲弊していても何もしなかった。
それを
「さすがネールです。
小さな声で呟くとミリアは疲労が溜まる体に鞭を打って地面に付いた膝を上げて再び立ち上がる。
そしてミリアは口を動かした。
「————」
聞き取れない言葉の
すると先程まで巨大な魔獣が放っていた紅蓮の炎を防いだ
青い火種はどんどんと育っていき結界の中心へ収束する。
「今までの炎、数倍にしてお返しします!」
結界の中心へ収束した青い炎は火山の噴火の如く青い炎が上空へ噴き出した。噴き出した青い炎は上空を飛翔する巨大な魔獣を呑み込んだ。
ミリアが最初に
ミリアは炭化して崩れていく巨大な魔獣の
杖の先の魔鉱石とネールのボディの輝きが消えると
その状況でミリアは上空の巨大な魔獣を見上げる。
鋼色の光の軌跡が炭化した魔獣の九つの首を通り過ぎると魔獣の首は刎ね飛ばされて白い灰と化す。そして核を覆っていた
青白い光の軌跡が衝突した魔獣の核に亀裂が入った。どんどんと亀裂が隅々まで入ると、魔獣の核は粉々に砕けた。
すると巨大な魔獣の体は光に包まれる。光に包まれた魔獣の体は風に乗って光の粒子になって霧散する。
光の粒子が散り散りに霧散すると上空にいた魔獣の姿は跡形もなく消え去った。
「……なんとか、……持ちました。ネール」
ミリアが言葉を紡ぐ途中でミリアは地面に倒れる。
「ミリア!」
ネールは地面に倒れかかったミリアをすぐに受け止めた。
「ったく、無理のし過ぎだ」
ネールは溜息を吐いた。するとネールはミリアを背中に抱えて歩き出した。
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