第3話 ファイの仕事
王都の門に到着すると荷物にしがみつきながらファイの背中に乗っていたサンチェスは地面に足を付けた。
「運んでいただいてありがとうございます」
サンチェスは感謝をファイに伝えるとお
「オレは当然の事をしただけです」
お辞儀をして感謝を伝えるサンチェスにファイは少々困った様子だ。その横で宙に浮いているノルンはファイの後ろから抱きつきながら渋い表情をサンチェスに向けた。
「今回はファイの
ノルンはしかめっ面になってサンチェスに抗議する。しかしその声はサンチェスには聞こえていない。
「オレ以外に聞こえないからって好き勝手言うなよ」
ファイはすぐ傍にいるノルンにしか聞こえない小声で
そしてサンチェスは門の
「これは私の屋敷までの地図です。荷物を運び終えましたら是非私の屋敷へ訪れて下さい。謝礼をお渡しします」
「いえ! 謝礼なんて受け取れません!」
「そんな事を言わず受け取って下さい。
サンチェスは自身の想いを告げるとファイは折れて「分かりました」と返事を返す。
「それでは荷物を届け終えたら屋敷の方へ伺います」
「分かりました。準備をしてお待ちしてます」
約束をするとファイは荷物を背負った。ノルンはさっきまでサンチェスが抱えられていた場所に移動するとサンチェスの方を向いて、べぇと舌を出した。
そんなノルンの行動を無視して届け先へ向かうために王都の門を潜った。
門を潜ると
王都は王宮のある
第三区の大通りを進むとファイの背中に抱きついているノルンは声をかける。
「あの区長、絶対裏がありますよ」
「何を証拠にそう思うんだ?」
「精霊の勘です」
「ただの感想じゃねえか」
そんな会話をしていると大きな荷物を抱えているファイの足が止まる。そしてとある
「まずはこの薬屋だ」
ファイが足を止めた店舗——薬屋に到着すると店の近くに背負っている荷物を下ろして中身を取り出す。
取り出した箱詰めされた薬を持って薬屋の扉をノックして店の中へ入る。
「運び屋のファイです。ご注文の品をお届けに参りました」
店に入って運んできた荷物——
「いつもありがとうございます。何度も大量の注文をして悪いね」
薬を届けたファイに労いの言葉を告げると、ファイは「これも仕事の内です」と淡々と返事を返す。
返事を返すと再び店の外に出て荷物の中から注文の品を取り出す。
何往復か注文の品を全て運ぶとファイは「またのご利用お待ちしています」と言って店を出た。
薬屋を出たファイはノルンと共に次の届け先へ足を運ぶ。
次に向かったのは
第三区とは建物の種類が異なり金属の柱が剥き出している建物が多く並ぶ第二区を進むとファイは再び足を止める。
足を止めたファイの視線の先には工具店があった。
ファイは店の近くに荷物を置いて荷物の中からガチャっと金属音を鳴らす注文品が入っていた。
工具店の前の扉をノックするファイは扉を開けて箱を抱えながら店内へ入店する。
「運び屋のファイです。ご注文の品をお届けに参りました」
そう言うとファイは注文品が入った箱を床に置いて店内にいる老人に声をかけた。
「今回は多く注文して悪い。運ぶの大変だっただろ」
「いえ、オレにとっては大した量ではないです」
店員の老人に言葉を返すと店のすぐ傍に置いた荷物の方へ戻り、再び注文品を店内に運ぶ。
注文品を全て運び終えるとファイは前の薬屋と同じく、「またのご利用お待ちしています」と言って工具店を出た。
「届ける物はあと一ヵ所ですね」
再び荷物を担いだファイにノルンは残り最後の注文品を見た後、ファイの背中に抱きつく。ノルンに抱きつかれたファイはそのまま最後のと苔先へ向かう。
最後の届け先である
建物や乗り物から噴き出す蒸気が印象的な光景の第五区を進むファイは目的地へ到着する。
到着した場所にはは白く大きな建物——王立治癒院が
ファイは荷物を地面に置いて残り一つの注文品である箱詰めの物を抱えて治癒院の中へ入った。
治癒院の中には多くの人がごった返していた。
その多くは体のどこかに怪我をしているのか包帯が巻かれている。そしてその負傷者に手当てをしている白衣を着ている人が何人かいた。
「運び屋のファイです。ご注文の品を届けに参りました」
近くにいた白衣の女性に声をかけると、ファイに気付いた白衣の女性が近付いてきた。
「ありがとうございます。急に注文品を届ける事になってすみません」
白衣の女性は届け物を運ぶファイに謝った。そんな白衣の女性に「気になさらなくて大丈夫です」と伝えた。
そして注文品である薬品等を全て運び終えると、「またのご利用お待ちしています」と口にして治癒院から出た。
「お疲れ様です。ファイ」
治癒院から出てきたファイに労いの言葉をかけたノルンは
「これで今回の仕事は終わった。あとは——」
「あの区長の
ファイが口にしようとする途中でノルンは途端に嫌そうな表情を浮かべて次にする事を口にした。
「そうだな。早めに用を済ませてすぐに帰ろう」
「それが良いです」
荷物がなくなったファイの背中にくっつくようにノルンが抱きつくと、ファイは
「ここから走るわけじゃないんだ。後ろにくっつく意味ないだろ」
「別にいいじゃないですか。今日は無性にファイの背中にくっつきたいんです」
あまりに自分勝手な持論を口にしたノルンにファイは再び
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます