第6話 魔獣討伐

「ここが魔獣の穴か」


 太陽が真上に上る中、ロイドとラムダは目の前にある木々がしげる森が見えた。

 ロイドはふところから地図を取り出して目的地へ到着した事を再確認する。


「確かにあの森も奥から魔獣の気配がする」


 目の前の森の奥には目で見えないが何か禍々まがまがしい気配がただよう。


「それでどうするんだ? あの森から漂う気配からするに魔獣は数十体はいるぞ」

「俺も考えなしにここへ来たわけじゃない」


 ラムダの言葉に返事を返すとロイドは腰に携えた聖剣を抜剣した。するとロイドは抜剣した聖剣を地面に突き立てた。

 突き立てた聖剣の刀身が清浄せいじょうな光を放つと目の前の森を覆うように光の壁がそびえ立つ。


 光の壁がそびえ立つとロイドは地面に突き立てた聖剣を引き抜いた。引き抜いてもなお清浄せいじょうな光を纏う聖剣をロイドは横一閃いっせんに振った。

 すると横一閃いっせんに振った聖剣の刃の軌跡から清浄せいじょうな光が溢れ出し、巨大な光の刃が森の木々を切り倒していく。

バタバタと光の刃で切り倒されていく森の木々は一瞬にして視界が良好な平地へ変化した。


「とんだ力業な考えだな。ロイド」


 ラムダは呆れた様子でロイドを一瞥いちべつしながら口にする。そしてロイドから森があった方へ視線を向ける。すると視界には平地となった場所に跋扈ばっこする数十体の魔獣がロイド達を威嚇いかくしていた。

 体躯たいくの大きさや生えている角や翼の形、大きさは違う。しかし共通して胴体には水晶のような鉱石——核がむき出しになっている。


「どうする気だ? 魔獣全部がこっちを狙ってるぞ」

「お前こそ忘れてないよな? 俺の生業なりわいが何か」


 そう言うとロイドは聖剣を構える。

 するとロイドは威嚇いかくしている魔獣達へ向かっていく。その姿を目に映した魔獣達は雄叫びを上げてロイドへ駆け寄る。

 駆け寄るロイドの握る聖剣に清浄せいじょうな光がより強く輝く。

 するとロイドに向かってくる魔獣に向かって聖剣を振るう。


 ロイドの振るう聖剣の刃が魔獣の体に触れると滑るように聖剣の刃が魔獣の体を斬り進み胴体の核が両断される。

魔獣の体が一刀両断されると切り伏せられた魔獣の体は一瞬にして白い灰に変わる。

白い灰に変わった魔獣の体は地面に積もる。

 すると他の魔獣達がロイドに向かっておそい掛かる。その魔獣をロイドはすぐに構え直し聖剣で魔獣を胴体の核ごと切り伏せる。


 魔獣が白い灰に変わると次々と魔獣がロイドへ向かっておそい掛かる。その魔獣をロイドは無駄な動きを一切せず見るにも美しい嘘器で魔獣を次々と切り伏せていく。

 すると魔獣達の動きが止まった。

 魔獣は体躯や姿は普通の獣より凶悪だが、知能は大して変わりはない。見事な身のこなしと聖剣の剣戟で同胞を討伐とうばつされていく姿を見て魔獣は本能的に恐怖を覚えたらしい。


 残りの十数体の魔獣はゆっくりとロイドを囲うように動き出す。

 翼を羽ばたかせ空中へ移動する魔獣、地を這うように警戒しながらロイドの背後へ移動す魔獣、様々だが少しするとロイドを四方八方に囲む魔獣達は一斉に牙を剥きおそいかかる。


 一斉に動いた魔獣の動きにロイドは口角を上げた。

 ロイドは聖剣を一閃する。

 するとロイドの周囲から光の刃が顕現する。顕現した光の刃は縦横無尽に放たれおそい掛かる魔獣達に向かって飛んでいく。

 光の刃が魔獣に命中すると核ごと魔獣の胴体が両断される。

 魔獣の胴体が両断されると白い灰となってロイドの周囲に山のように積もる。


伊達だてに魔獣狩りを生業なりわいにしていないというところか」


 つい先程まで森を平地にしたロイドを威嚇いかくしていた魔獣達はものの数十秒で全て討伐とうばつされていた。


「誰が力業で魔獣を倒すって? ラムダ」

「あぁ、訂正する。見事な聖剣の剣捌けんさばきだ。ロイド」


 周囲に魔獣がいなくなってラムダとロイドは視線を交わす。

 するとロイドは聖剣をさや納剣のうけんする。納剣のうけんしたロイドは先程までいたラムダの方へ歩き出す。


「それで討伐とうばつした魔獣の亡骸はどうするんだ?」


 ラムダはそう言うとロイドはすぐに答える。


「聖剣で倒した魔獣の亡骸はただの灰と変わりない。そのまま土になるだけだ」


 ロイドはラムダにそう言うとラムダの傍まで辿り着いた。


「これで依頼いらい内容は完了だ。これから王都へ戻るぞ」


 ロイドはそう言うとラムダの首元の皮を掴んだ。

 首元の皮をつかまれて持ち上げられたラムダはロイドを怪訝けげんな表情を向けた。


「それで運んでやる相手にこの対応は何だ?」

「俺が魔獣を倒してる間何もせず見てただけのラムダに言われたくねえな。俺には借りがあるんだろ? だったら討伐とうばつの手伝いくらいしろよ」


 ラムダの言葉に同じくロイドも怪訝けげんな視線を返す。


「ロイド一人でも魔獣を討伐とうばつできたんだからいいだろ」

「そう言う問題じゃねえ。借りを返す誠意を見せろって事だ」


 互いににらみ合って数瞬すうしゅんつとロイドとラムダは同じタイミングで溜息ためいきを吐いた。


「何やってんだろ。俺達」

「また不毛な時間を使ってしまった」


 そう言うとロイドはラムダを放した。地面に足を付けたラムダは瞳に異様な輝きを纏う。するとラムダの体が宙を浮く。

 ラムダの体が宙を浮くと、少ししてロイドの体も宙を浮く。


「今度はもっと速度を落として移動してくれよ」

「分かっている。もう目的は終わったからな」


 そんな会話をするとロイドとラムダは王都のある北東へ空中を移動する。

 移動する速度は魔獣の巣穴へ向かう時よりも格段に遅かった。

 その速度でロイド達は王都へ向かう。

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