無題⑤(描写練習)

 柔らかい灰色の薄雲が空をふわりと包んでいる。太陽に照らされてか、雲の端は白金色に輝いている。

 その下には、明るいパステルカラーの宮殿が建っていて、ドーム状の屋根が大小いくつか見える。そのつるりとした丸い屋根は、空の色に似た色をしている。白い彫刻に飾られた門や赤レンガの屋根が、淡い色合いにはっきりとしたコントラストをつけている。

 宮殿を境とするように、こちら側には凪いだ水が広がっており、向こう側にはぼんやりと街の姿が見え隠れする。そしてその大きな水鏡には、逆さの城が映り込んでいる。

 水は宮殿とその向こうの空に近づくほど軽く淡い白に、こちらに来るほど重く暗い緑に色を変える。

 水には船が疎らに浮かんでいる。物売りの船なのか、帆のない縦長の船もあれば、豪奢な三角の帆を風にたなびかせている船もある。船の歩みに合わせて、水面に幽かに漣が立っている。

 一番手前には、軽やかに水の上を滑る木船が今まさに視界を横切ろうとしている。帆のない古式の小舟は、赤い帽子の漕ぎ手に操られ、力強く進んでいく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る