鏡の反目(ワンライ)
唯一無二の個性的な存在であればそれで良いのか。個性的であることと孤独であることは何処か同じことだと言うのに。
主導者であることよりも、模倣者であることの方が偉大なことだ。提唱者であることよりも、追従者であることの方が尊いことだ。
道を作ることよりも、道を踏みしめることの方がずっと大事なことだ。
模倣もできないのなら、主導などするべきではない。従うことができないのなら、発するべきではない。
素晴らしい模倣者で無ければ、正しい主導者にはなれない。
例えどれ程醜い絵画でも、正しく模写が出来なければ、美しいオリジナルに価値などない。
模範生でなくてはならない。模があるなら従わなくてはならない。
型からはみ出す事を、自己表現だと誤る者の多いこと。
倣う事の意味を踏みにじるものに、新しい模たる価値があるものか。
オリジナルであることばかりが持て囃されて、船頭多くして船山に登るという言葉を、最早誰も鑑みない。
船頭が何百人居ようとて、黙々と周りに倣い、人に従う水夫が無くては、船はとうとう何処にも辿り着くことは無い。
個性を突き詰め、孤立を極め、誰もが誰もと違くあろうとした果てに、終ぞ誰もが己を見失う。
己である事よりも、人と違う者であろうとする事ばかりに頓着して、己の価値を見誤る。
倣い従い和することの価値が、役目に殉ずる者である誇りが、果たして見失われつつあることの、なんと嘆かわしいことか。
そして今に至り、鏡は、鏡であることの矜恃を放棄したのだ。
唯一無二であった所で、真実に倣わない鏡に、一体どんな価値があるやら。
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