1-15 作戦
「首尾は?」
「上々と言って差し支えないかと。ただ東南入口付近の教会と中央街道近くの大屋敷が強力な防護術式で覆われていて崩すのは容易ではなさそうですね。見たところどちらも侵入防止結界術式の類のようでしたので、内外共に干渉不能ですし無視してしまって差し障りはなさそうですが」
戦場の真ん中でベルセルクの首長メドヴェディはどっかりと胡坐を組んでいた。
好き放題に暴れ回っている部下の統率を取る気は全くなさそうだ。むしろ好き放題暴れ回るのが今回の作戦において最も推奨される行為なのかもしれない。
「そうか、地下で出会ったあの男たちの仲間の入れ知恵かもしれんな……。ここの住人が幾分か少ないように見えるのもそこに隠れているせいだろう」
「どうしますか、敢えてぶち破って皆殺しにしますか?」
伝令役として近くまで戻ってきた
「好きにしろ。殺したいなら殺せばいいし、嬲りたいなら嬲ればいい。俺たちの仕事は人間側の集落をとりあえず一つ潰すことだけだ。それさえ出来れば方法は問わん。だが、そうだな……。作戦以外で俺から一つ注文を付けるとするならば、強者を見つけたならば俺のためにとっておけ。俺も血に飢えている、肩慣らしも終わっているしな」
「御意。仰せのままに」
二人はクツクツと笑い声を漏らしながら口角を上げる。
零れ笑いが収まらないうちに夜闇に一つ号砲が轟いた。
「また派手に暴れていますね。それでは自分もまた人族を狩りに行ってきます」
「そうか。ではそろそろ俺も動くかな。さっきの轟音の場所にはあまり近づくなと伝えておけ、あそこを俺の狩場にする」
「……? 御意。ご真意を測りかねますが伝えましょう」
「カッカッカッ!! 俺も興が乗りすぎれば時を忘れるかもしれん。もしそうなったときは手筈通りに行動しろよ」
「まさか……。流石にそれはあり得ないでしょう? しかし御心のままに」
メドヴェディはザァッと靴底を鳴らして立ち上がり、これから予想される強敵との闘争に胸を躍らせる。
彼には分かっていた。部下の誰も気が付いていないが今さっきの轟音は味方陣営から発せられたものではない、ということが。それは経験からくる戦いの嗅覚のたまものであって何か確たる証拠があるわけではない。それでも確信があった。
「つまらん作戦かと思っていたが思いもよらぬ掘り出し物が見つかって喜ばしいなこれは」
獰猛で好戦的な笑みを浮かべ、夜闇の中へ嬉々として躍り出す。
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