1-13 戦火の中で


 村にたどり着けばそこは想像通り戦火が広がっていた。


 焼けた家に割れた地面、拉げた水車と飛び散ったレンガ、焼けた鉄のような臭いと怒号と金切り声、それから頬を撫でるひりつく空気。


 視覚と聴覚と触覚と嗅覚、全ての要素から得られる情報がある事象へと集束していく。


 一言で言えば殺戮で、別の表現を借りるとするならば蹂躙。


 闘争でも戦闘でも殺し合いでも果し合いでもない。

 ただただ一方的な暴力の気配が充満している。


「は、ははっ……、はははっ……」


 思わず乾いた笑いが零れた。


 肋骨が砕ける痛みや四肢が両断される苦痛、気管を逆流する胃液の爛れるような痛み、傷口の上から塗りつぶすように新しい傷口を増やされたときの疼痛。自らが直に経験したそれらが、今罪のない人たちに向けられているということを幻視する。


 少なからず予期は出来ていたし、心構えも出来ているつもりだった。


 にもかかわらず精神をぐらぐらに揺らされて、鋭い衝撃が胸の真ん中を貫いていく。


 もし仮に一切の心構えが出来ていなかったとすれば耐え切れずに心神喪失で膝をついていたに違いない。そう確信出来るほどに受けた衝撃は大きかった。


(行こう……、まだ全員が全員殺されたと決まったわけでもないし、ネウメソーニャも探さなければならないし……)


 軽く首を振ってから大きく息を吐きだして、吐き気を腹の下へと飲み込みつつも村の中へと駆け出す。


 一歩踏み入ればムッと生温かな空気が全身を包んだ。


 過去に何度か経験したことのある戦場の感覚と近い。だが、その時よりもずっと生ぬるくて気持ちが悪い感覚だった。それはここが殺し合いのための場ではなく一方的な殺戮の場であることに由来しているのだろう。


 緊張感で胃がねじれるというよりはただただ生ぬるくて気分が悪くなる。


 一方的な虐殺の場の空気がこんなにも怖気がするモノだとは知らなかった。知りたくもなかった。


「くそっ……、こんな、こんなことが……、楽しいかよ……。胸糞悪い……」


 吐しゃ物の代わりに短い言葉を吐き捨てる。


 品のない言葉だったとしても黙ったままでは居られない。あまりにも濃厚な不愉快さを孕んだ空気感が感情の嫌な部分をひたすらに逆なでしてくるのだから。


「ネウメソーニャ!! ネウメソーニャ!! いるか!? 生きてたら返事をしてくれ……!!」


 火の回る村の中を走りながら大声で名前を叫ぶ。

 大声を上げて走り回るなんて敵からすればいい的だ。


 そう、的になるからこそ、わざと大声を上げて走り回る。

 彼らの興味がこちらに移ればそれだけ逃げ延びられる人が増えるかもしれない。


「ギヒヒ、おいおい、そんなに殺してほしいのかぁ? 不用心だぜぇ??」


 早速一匹釣れた。


 釣れたなんて簡単に言ってみても相手は歴戦の熊人ウェアベア、膂力も反応速度も戦いに関する嗅覚も人間のそれをはるかに凌駕している。真っ向勝負では勝ち目なんてサラサラない。


 それでも足を止めて振り返りざまに身構えながら言霊を紡ぐ。


守勢防壁ポパケヘコロ


 悠長に振り返ってから構えようなんて考えでは相手にとっては遅すぎるってことくらいのことは身をもって経験しているから分かる。


「ギヒッ!! いい反応じゃねーか――! だがよぉ、それでも遅いぜぇ――!!」


 だが、それでも見誤っていた。


 振り返り切るよりも少し早く敵の槍の一撃がビュゥ!! と襲い掛かる。


 ガキンッ!! と激しい金属音が響く。


 降りぬかれた槍の一撃に耐え切れずに体勢が崩れて勢いよく真後ろに吹き飛ばされた。


「首を落としたと思ったが、ずいぶん堅い鎧を着てるみてーじゃねーか。こりゃあ、嬲りがいがありそうだぜぇ……」


 ドンっと音を立てて石壁へと激突した姿を見て、熊人ウェアベアは満足気に笑みを浮かべていた。


「痛っつつ……、なんてバカな筋力してるんだ……」


「ハッハー! 俺たちの取柄はそれだからなァ!! バカな筋力は誉め言葉だぜ!!」


「こっちも貶すつもりでは言ってないよ」


(にしてもヤバイ。ギリギリで守護術式を起動できていなければ今の一撃で死んでいた……!!)


 石壁から背を離して、短剣を抜き改めて構えなおす。


 相手を正面に捉えて戦力差を冷静に計算する。まず得物は短剣と槍、リーチでは間違いなく相手の方に利がある。ついでに身体能力も十対〇で向こうに軍配が上がる。


 単純な白兵戦を仕掛けるならば十中八九こちらの負けだ。むしろこの距離で正面から相対しているという状況だけで既に負けているとさえ言える。ここまでがどう頑張っても動きようのない結論。


 つまり現時点で敗着必至なのにも関わらず相手の得意な戦い方に乗らざるを得ないという訳だ。


(このままやり合うのは正直言って分が悪すぎるが……、だからと言って仕切りなおそうにも相手の方が足が速い訳で……)


「仕掛けてこないのか? そっちが来ねーならこっちから行くぜ?」


 いうが早いか、敵の体が動いた。


 六メートルほどあった両者の距離はほぼ一息で接触圏内まで詰め寄られる。


 ギュグルルルゥ!!! と空気が鳴った。


 完全に見えない動きではなかった。ギリギリで視認は出来る。相手がどう動いて、どういう軌道を描き、どこを狙って一撃を放ってきたのかを捉えることまでは出来なくもない。ただし、ギリギリで視認が出来るということがイコールで反応して受けられるというモノでもない。


 ズガンッ!! と槍による一撃が石壁を突き壊した。


 寸でのところで真横に転がり直撃を回避した。今から攻撃するという宣言と見せつけるかのような大仰な動作のおかげで間一髪回避が間に合った。それが無かったならば、初動を隠されていたとすれば、今の回避行動は実現困難だった。


 これが人間と熊人ウェアベアとの根本的な膂力の差。


 正面から相対した状態でぶつかり合ってしまえば小技を駆使したとしてもどうにもならない、そういうレベルの差が厳然として存在している。


 砕けた石壁からゆっくりと長槍を引き抜きながらも視線だけはじっと獲物を捕らえ続ける。


 捕食者の眼光、あるいは狩猟者の眼差し。敵を闘争相手とは認めていないモノの視方。


「二度躱したが、偶然か実力か分からねーなァ? まあいいか、次は外さねーから覚悟しておけよ!!」


大地の力よォエヘヘコロ石の檻でエジェアケ我と敵とそれ以外を分断しフォグヒレエヴェエズフィォフィ跳躍する力を生み出せヘチュウチョルヘコロウペォジャ


 相手の言葉は取り合わず、無視して呪文を紡ぎ出す。


「口述起動式とはまた珍しいなァ!」


 完全口述起動式。術式陣を描かずに起動用の古語だけを用いて術式を起動する方法。陣を用いた術式を起動するための短い祝詞と違って古語に対する造詣が必須で、なおかつ自然エネルギーを直接自分自身で制御し続けなければならない。


 術式の制御、起動方法としてはすっかりと廃れた方法論。


 事前に陣を刻み込んだ術式書スクロールを作っておけば短い祝詞を呟くことで自然エネルギーを引っ張り込み、力の維持と制御を安定させることが出来るのだから、わざわざ長ったらしい制御文を自前で組み上げて、繊細な制御をし続けなければならない完全口述起動式は利便性でも安定性でも陣による術式起動に劣るのだから当然と言える。


「だが、そんな悠長で繊細な作業をしながら俺たちと戦えると思っているのならばそいつはとんだお笑い種だぜぇ!!」


 敵の熊人ウェアベアが高らかに声を上げた。


 彼の言葉は正しい。


 ただでさえ真正面からの戦闘では分が悪いというのに、さらに緻密さが要求される口述起動式などという負荷の大きな方法で術式を扱おうとすればどうなるかなど、火を見るよりも明らかだ。


 しかし、それでもその方法に手を出した。


 ギュルルッ!! と地面に自然エナが広がり、ガリガリガリガリと音を立てて地面を隆起させて二人を囲う。


 天井はなく、壁の高さは精々三メートル半といった程度。そのうえ土を隆起させた壁はお世辞にも厚いとは言い難い。熊人ウェアベアの力ならその気になればやすやすと破壊できる程度の強度しか持っていないのは明白だった。


「何を仕出かそうとしてるかなんて知らねーがよ。こりゃちょっと薄すぎるんじゃねーか? ボロクズ同然だぜこんなのはよォ」


「それで十分だよ。そのくらい脆いくらいが丁度いい」


 自然エネルギーの流れを束ねるという繊細な作業を続けながら、相手の煽り言葉に乗る。


「いや、俺には分かるね。貴様ら人類種じゃこの程度の壁を制御するのが関の山なんだろ? 本来こういう薄い壁ってのはその向こう側に大型の攻撃を用意するもんだ。だがな、人類種にはそれが容易じゃないから陣なんて技術を発展させたんだぜ」


「お見事。よく勉強してるね。肉体も頑強で膂力も強くおまけに頭も切れる……。正直まともにやったら勝ち目なんてないだろうね」


 言葉終わりと同時に跳んだ。

 全身をバネのように使って躍動し全運動性能を前に出ることにだけ集中させる。

 瞬間的に熊人ウェアベアの跳躍に抵触出来る程度の運動性能で肉体が動く。


「中々速い。が、その程度なら対応出来るぞッ!!!」


 完全に不意を突いたはずのその行動は、しかし見てから迎撃が間に合う。間に合ってしまう。


 構えを解いた状態から構えなおして、跳び荒ぶ相手へと正確に槍による一撃を見舞う。


 彼我の差はそのくらいにハッキリと隔絶していた。


「っっ――ッ!!」


 ブシャッ!! と肉に刃が突き刺さる音が響く。土壁に反響し空へと轟いていく。


「ッシャラァァァァ!!!」


 頭部からやや下に逸れた槍の先端が左肩へと突き刺さり、体のバランスを大きく傾かせた。しかしそれと同時に、薄い土壁を足蹴にする。


 バウンッ!! と土壁から強い反発力が生じて肉体を無理やり前方へと押し出す。その衝撃で貫かれた左肩がぶちりといやな音を立てて体から千切れる。


「なッ……!? コイツ捨て身か……!!」


 後の先で完璧なカウンターを放ったと言っていい。まさに一撃必殺だ。死に物狂いで反撃してくる手合いとも幾度も相対してきたし、そのたびに殺しきってきた。その経験から、相打ち覚悟の反撃と言っても肢体を弾き飛ばされれば普通はそこで一旦でも動きは止まる。


 だというのに目の前の男は一切の躊躇もなく自分の腕をぶち切って首を狙いにきていた。


 必殺の一撃を放った直後で筋肉への伝令が寸分遅れる。


 風がそよぐ様な一閃。

 太い首元へまっすぐに短剣が突き立てられ、沈んでいく。勢いのままに突き刺した短剣を外へとむけて払う。


 一連の動作は一秒にも満たない。

 しかしその一秒こそが決定的な明暗を分けた。


「ハッ!! お見事……!! 壁ではなく反発性のジャンプ台だったとはなァ……!!」


 熊人ウェアベアが掠れた声を上げる。展開していた術式は退路を塞ぐためや行動を制限するための防壁術式ではなく、外側から無理やりに動きを変えるための軌道制御用の術式だったというわけだ。


 いくら肉体的に頑強な種族であったとしても首を半分裂かれれば長くは持たない。


「弱小と侮ったのが敗因だなァ」


 カカカと笑いながら熊人ウェアベアが崩れ落ちる。


 それと同時にドンッ!! と空中に放り出された体が地面に墜落した。左腕もぼとりとまた落ちた。


 ゴロゴロと、数メートル大地を転がる。


「ああああ、ウワァァッァァッァアァア!!」


 直後、絶叫が上がった。


 制御を失った自然エナが霧散して隆起させた土壁が崩れる。


 腕が千切れるという強烈な痛覚刺激によって繊細な制御を維持できなくなったからだ。これも口述起動式のデメリットの内の一つで、リアルタイムに自然エネルギーを制御し続けるという術式の性質上単に起動しただけでは結果を固定することが出来ない。


 今の痛みと、少し前の痛みがシンクロする。再発によるフラッシュバック現象。この短い間に二度も強烈な痛みを受けたのだ、精神がまともな状態でいられるはずがない。


 しかも鋭利な刃物で両断された前回とは違い、今回は中途半端につながっていた筋線維や腱、神経などを勢いで引き千切っている。雑味のある痛みとでも表現すればいいだろうか、どこまでが痛くてどこからが痛くないのか、傷口が痛むのか、別の部分が痛むのか、判別がつけられない。


 肉体の感覚が痛覚によって塗りつぶされて混線する。千切れて今はついていないはずの左腕が幻覚のように痛み、左腕だけではなく、右脚も左脚も右腕も酷く痛む。


 血管の中に小石を流し込んでゴリゴリと内側から研磨されるような痛みが爆発的に広がっていく。


「あぁああっ……、アァァァァァァッァア……」


 目から涙が、鼻から鼻水が、口から涎が、そして傷口からは血糊がダラダラと地面を濡らす。


 蹲って、ない左腕を掴もうとし、右手の拳が空を切る。


「アアアァァッァァァァ!!」


 断末魔のような声を上げながら辺りをのた打ち回る。


 本当ならばこんな場所で大声を上げ続けるのは下策も下策だ。だけれども、強烈過ぎる痛みでまともな思考を保てるわけがない。だから無益で理外の行動を取ってしまっていたとしても彼のことを責めることは誰にも出来ない。


 だというのに、絶叫は急に鳴りを潜めた。


 尽きることのない痛みに精神が摩耗して意識がとんだ、というわけではない。荒い息を無理やりに抑え込むように呼吸を一定に整えながら蹲った体勢から身を起こしてゆっくりと立ち上がる素振りを見せているのだから。


 よろけながらもすぅっと立ち上がり、ない左腕を探すようにあたりを見渡す。


 左腕の肩口から零れ落ちる血液は不思議と流れを止めていた。


 しかしそれよりも異様なのは表情。透明なガラスのように色のない表情をしている。左腕が吹き飛んでいるというのに、今しがたまで痛みによってもんどりうっていたというのに、その表情には苦痛も苦悶も感じられない。


 地に倒れて血を流して白目を剥いた熊人ウェアベアのほど近くに自らの千切れた左腕を見つける。


 揺らめくような挙動でそちらへ向いて歩きだす。最初の一歩を踏み出す時にふらりと体勢が崩れた。本来あるはずの左腕がないことで動きのバランスがうまく取れなかったためだ。それでもすぐにバランス感覚を整えて真っすぐに目的地へとたどり着く。


 地面に落ちた左腕を屈んで取ろうとするが、傾いた体バランスを維持して屈むことが出来ずよろけてしまう。仕方がないので片膝をついて左腕を掴み上げる。


 本当に無感情で色のない表情で体から離れた腕を一瞥した。


 だらりとあらぬ方向へと曲がった肘関節に半ばあたりに不自然なへこみの出来た前腕。千切れた左腕に与えられたダメージは肩口以外にも波及していることが窺える。


 かなり大規模な治療術式を組んだとしても腕を繋げ直す程度が精一杯で、恐らく動かせるようにはならないだろう。それほどに複雑で酷い損傷だ。


 だというのにまるで当たり前のことをするかのようにその壊れきった腕を自分の体へ押し付ける。


 壊れたブリキの人形の腕を強引に付け直すような動作だった。


 人体を治す術式というのは骨の太さや血管の太さ、筋肉量や脂質の量、腱の強度、神経の過敏さ、感覚の曖昧さ、大よそ触覚に対して作用するすべてのことを事細かに術式陣に記述し、針を通すような繊細さで自然エネルギーの調整を施さなければならない。


 つまり、球体関節を持った人形の手足をパチンッと繋げてハイお終い、とするような気軽さで出来る芸当ではない。


 そのはずだというのに、無理やりに押し付けた左腕が淡く赤色に輝きを放つ。その光は自然エナの発散現象、つまり術式が物体を介さずに直接的に作用しているということの証左。


 音がした。


 ベキッ、バギッ、ゴキッ、ギリッ、ガキッ、と人体から聞こえてはいけないだろう音が辺りに木霊する。


 いつの間にか完全に血の止まっていた傷口がベリベリと音を立てて開き、血糊が宙に浮く。


 元々一つに繋がっていた時の肩の形そのままに光が収束していき、傷口と傷口が両側から肉と骨と神経と皮膚を再生成していく。


 異常で急速な身体の再生。


 普通の治癒術式ではこんな速度で肉体が再成形されることはありえない。人類種が肉体の再生成を行った場合、指一本分だけで発狂するような痛みと立ち上がれなくなるほどの虚脱感を覚えることになる。通常はそれを軽減するために指一本であったとしても五時間から八時間ほど時間をかけて治癒し続けるという方法を取る。


 しかしそんなことはお構いなしという風に千切れたはずの左腕はみるみる肉と骨と軟骨と神経と皮膚を同時進行で形成してしまう。


 腕が千切れた時よりも大きな痛みがあるはずだ。だのに眉一つ、口角すらも動かさずにただ静かに瞬きをするのみ。


 光の集束が治まる。

 時間にすればおよそ一分程度。たったそれだけの時間で千切れた左腕は繋がった。


「……、」


 静かに左腕を持ち上げて握りこぶしを閉じ開きする。

 この短時間で腕としての機能が完全に回復していた。


 表情に色が戻る。


「なっ……?! 何が……?」


 瞠目。記憶が飛んでいたわけではない。自分の体に何が起きたのか正確に理解できている。だからこそ、驚く。何せ治癒術式を起動したわけでもないのに千切れた腕がくっついていて、あまつさえ元のように動かせるのだから。


「問題なく動くけれど、その方が却って怖いな……」


 安堵や喜びよりも恐怖感が勝った。人知を超えた力の影響を実感する。


(ただ、想定通りと言えば想定通りではあるのだけれども……、問題は一体どの程度まで治るのか。どの程度まで治ってしまえるのか、だよな……)


 少なくとも四肢の分断程度ならば肉と骨がグチャグチャになっていたとしても治るということは地底湖の時と今との二回で証明されている。


(いや、それよりも今はここを離れるべきか……)


 今の自分について思考するよりも、現有戦力でこの地獄のような場所から少しでも多くの命を拾う方法を考えた方が賢明だ。


 ざっと辺りを見回して、倒れた敵の死骸とその武器が目についた。長大で肉厚な刃を持った長槍。


「いや……、無理だな」


 歩きながらそれを自らの言葉で否定する。その得物は人類種が持つには大きく重すぎる。だから、その近くに転がっている血まみれの短剣を拾いなおして、足早にその場を後にする。

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