厄兆はささやかに忍び寄る

12/17

PM11:20


何か暖かく湿った何かが体を行き来する。

心地いいが、くすぐったい。

目を開ける。


少しやつれた顔。

小皺が増えていた母がいた。


「おはよう、スズメ。寝坊よ、寝坊。

 学校はどうする?」


全力で「いつも」を取り繕うが、

気力が無い声が、それを暴いていた。


「うぅ〜ん。行くぅ。」

思ったより自分の声が小さい。


「そう。んじゃお弁当持っていてね。

 食卓の上にあるから。」


 「ありがとう、お母さん。」

 

 「じゃあ、お母さん少し休むからね。」


 小さくなっていく足音を耳にしながら

 体を起こす。それだけで少し疲れた。


 「うーん。体力には結構自信あるんだけどなぁ。よいっしょっと!」


自慢できる脚力は期待を裏切らずに体を支えてくれた。学習机の上からスマホを取り、

体の柔軟体操を調べる。


足を伸ばしたり、背中を伸ばしたり、色々やっていたら段々と体が温かくなってきた。


制服に着替えながら鏡を見る。

心なしか白くなった肌。

少し気持ち悪く感じた。


階段を降りていき、リビングに出ると、

赤紫色のキチペンの弁当箱があった。

バックに詰め込んで、脱衣所で身支度をする。


また自分の顔を見ながら、歯磨きを済ます。

手入れをされてたようで、髪は思いの外柔らかく、軽く整えてポニテを結ぶ。


「じゃあ、いってくる〜」


返事はなかった。


学校には直で向かわず、コンビニに入る。

チキンとホットコーヒーを買って、

店を出る。


すっかり太陽が頭上を照らしているにもかかわらず、寒さは身に染みてくる。

チキンを口に咥えて、コーヒーを握りながら走り出す。


ああ、遅刻遅刻ぅ☆

ゴッツンコも、胸キュンもなく学校に着いてしまった。


「おっ、吾妻だ。」


時刻はちょうど昼休みに入る頃だった。

よく場を盛り上げてる男子に名前を呼ばれた。


「おっす、おっす。」


知り合いに軽く駄弁りながら自分の席に座る。


「スズりん、眠り姫病になったんだよね。」


水島 皐月、明るく元気でその上成績優秀と絵に描いたような優等生。あと身長でかい。

クソ、なんで座高と私の身長が同じなんだよ

ついでに胸もでかい、ふざけんな。


「うん、なんか月曜に寝たのに、今日目が覚めたの。」


「んじゃ、つまり月曜はサボったんだぁ〜この悪ガキぃ」


「ええと、まあいいんじゃないかな....」


気弱そうに話に入ってきたのは、横山 雫

うん、委員長キャラにドジっ子と気弱さをトッピングしたような子、ちな、私よりでかい

実は委員長じゃなかったりする。


「でもそっかぁ、葬式にはちゃんと出てやるから安心しな!」


「いや、死なないから。」


クソ失礼だな。でも、この接し方に安心感を覚えていた私でもあった。




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スズメ13日奔放記(仮) @kz_sasara

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