心、曇り。時々、ハンバーグ。

 15:15


 スマホを見て少し驚く、1日が長い、けれど早い。

 矛盾しててわからなくなるけど、そんな感じ。

 

 これから何しようかと考える。

 真昼の日差しもなくなり、冷え込みが一層増してくる。

 寒い。ポケットに両手を入れる。


 気がついたら、足は家へと向かっていた。

 信号待ちをしていると、遠くでカラスが鳴いた。

 夕方だ。空はすっかりと茜色に変わってた。


 寂しい感じがする。小学校の頃の遊び終わった帰り道に似ている。

 まるで区切りがつけられるように、きっぱりと一人だとわからせられる。

 

 帰ろう。少し小走りになる。


 家が見えてくると、なぜか安心する。

 うちは両働だから、四時まで誰も居ないのが普通だが、

 誰もいない家でも、やっぱり安心する。


 鍵をさして、ドアを開ける。抜いて、入ってそのまま鍵をかける。

 リビングのストーブをつけて、2階に上がる。

 部屋にある電気毛布の電源をつけて、勉強机と向き合う。

 配られた、課題の冊子を開いて、ペンを動かす。

 

 正直にいえば、冬休みの課題なんかやる必要性を感じない。

 もう、冬休みも何日過ごせるかも怪しい。

 それどころか……

 ただいつも通り、何もなかったと自分に偽ることに本当は意味なんて……


 ガッチャン。

 ドアの開く音がした。


 両頬を思いっきり叩く。

 

 「お母さん、お帰り!」

 階段を駆け降りていく。


「 スズメ、ただいま。今日の夕飯はチーズインハンバーグ。」

 さっと買い物袋を見せてくる。

 ペンギンの刺繍の入った私が贈ったエコバッグ。

 

 「了解、私も手伝う!」

 「そう、じゃよろしくね。」


 中学に上がってから、何回も母の料理を手伝った。

 料理は好き。美味しいものを誰かと分かち合うためにすることが

 好きだ。


 肉の焼けるいい匂い、そっと蓋を被せて火を調整。

 その間に他愛のない話をしながら母と皿などを準備する。

 

 そのうち、父が帰ってきて、一緒の食卓を囲い始める。

 

 「うおっ!、熱っ!」

 「ちょっと、はい、水。」

 

 「家」を実感する。きっとここが一番の居場所だ。


  20:47

 

 一番風呂を今日はいただいた。

 ペチャっと跳ねる水の音。

 水面に映る私はなんだかいつもより幸せな顔をしていた。


 21:30


 いつもより早めに布団に潜る。

 アラームの音量を最大にする。

 今日を振り返り、時に声を漏らしながら、

 意識を失っていく。



 

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