第5話 これから、いい家を作ろう

手荷物を持っただけで、新しい家に引っ越しした。ベッド、クローゼットと基本的な電器以外、本当に何もない家だった。


これからここを自分の家に仕上げる。一から作り上げればいい。どんなに時間をかけても、一つ一つゆっくり積み重ねればいい。


床の上に横になって、ぼーっと天井を見上げた。


静かだな。平和だな。


ずっと求めていたのはこういうことだよ。誰の目を気にせず、笑いたい時爆笑すればいい、泣きたい時号泣すればいい、やる気がない時何もしなくていい。こんなに簡単だけど贅沢なものをやっと手にいれた。


今は空っぽの家だけど、心はいっぱいだ。


好きな家具を選択して買う。

好きな装飾を家に飾る。

好きな料理をする。

好きな絵を描く。

好きな音楽を電子キーボードで演奏する。

やりたいことをやる。


想像するだけで、とてもわくわくしてきた。


もちろん、前の家を出ただけで、すべてが一気に解決できるというわけではなかった。そう甘くはないよ。


その後の何日間か、家族からの電話攻撃が続いた。違うのは、面と向かって叱られるから電話越しに音声だけの罵声に変わった。だけど、不思議なことに、同じようなことをされても、顔が見えるかどうかはこんなに違うって初めて知った。まあ、内容は主に私が恩知らずで家族を裏切ったとか、偉そうにこういうことをしたとか、家族を捨てたとか。でも、向こうは私を結構前から家族として扱われていなかったことをすっかり忘れたみたいで、聞いているうちに、何だか皮肉なものだなと思った。


私の居場所も知りたくて、しつこく聞こうとしたが、私はそれを言わなかった。知られたら多分毎日こっちに来て騒ぐだろう。せっかく手にいれた我が家を壊させないから、何としても守る。


数か月後、攻撃は徐々に収まった。諦めたとは思えないが、多分私の動じない態度を見て、本気であることをようやく受け止めただけ。時々、電話をかけて母の様子伺いをしようとしたが、嫌みたっぷりの言葉を聞かされると、私の方から真っ先に電話を切った。あんな傷つける言葉を聞いて、自分のためにはならないし、遮断した方がいい。


妹との関係も悪化した。口を利かないけど、メールで攻撃的な言葉を散々送られてきた。多分、利用できる盾が失われたことでイライラしているのだろう。まあ、私にはもう関係ない。母の愛情をたっぷり楽しめた分、それなりの代償を支払うべきでしょう。そろそろ自分なりの責任を持つべきだよ。私はもうあなたのせいで不幸になるのはやめたから。


今の私は幸せですか?


まあ、ある意味幸せだけど、でももっと正確に言うと、幸せになろうとする途中だ。


自分の家を手に入れた。すごくシンプルな内装、高くない家具、小さなスペースだけど、ここは私のすべてだ。私の人生、楽しい思い出、自由がここに詰まっている。テレビを見て笑えたり泣いたりしても誰かに怒られない、料理をする自由があり、友達を家に誘られ招待できる、趣味でやっているアートと音楽を誰にも馬鹿にされない、このすべてで心が落ち着いたし穏やかな気持ちになる。


私は今幸せになれるいい家で暮らしている。


これからどんどん良くなることを願いつつ、この幸せないい家で、この一人しかいない家族がもっともっと幸せな日々を送れることを目指して、今でも頑張り続ける。



- 完 -

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幸せな家 CHIAKI @chiaki_n

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