第8話 お笑いライブ? なにそれおいしいの?

 レッスン後、突然講師に声をかけられた。一人芝居を披露した後でである。それまでそんなことなかった。

「来週もなにか面白いものを持ってこい」

 えーっ、やめようと思ったのに、帰りに『シアターガイド』と『演劇ぶっく』買ってオーディション探そうと思ったのに。


 実はこれからお笑いグループを結成させるつもりだ、と講師は言った。


 は?


 絶対したくない、面倒臭い。バイトシフト制だから気軽に休めない(大きな仕事が入ったら休むけど)。


 話を聞いてみると、Hくん含めイケメンを集めて「イケメンお笑いグループ」を作るというのだ。

 僕は全く関係なし、である。

 ほかにもいくつかグループを作り、事務所主催でお笑いライブをやる、という。

 それあれじゃん、その売りたいイケメングループのおまけ、もしくは踏み台にするつもりじゃん!


 ていうか特撮のオーディション……のはずが。お笑いライブ、社長も乗り気? たしかにそういうイベントごととか好きそうな人ではあるけどさ!

 で、だ。


「お前、Yとコンビを組め」


 Yとは、どこにでもいそうな中学生でタレントさんになりたいとこのぬるいレッスンを受けているがきんちょである。まあみんなにペットみたいに可愛がられている。

「は?」

「あいつ使ってコントを作れ」

 め、め、め、めんどくさ!!!

「考えさせてください」

 と僕は逃げた。やってたまるか。こちとら遅番のバイトで忙しいんじゃい。読みかけの本もあるしお芝居や映画も観たいんじゃい。別にお笑いがどうこう言ってるのではない。ただ別に僕はお笑いは興味がない。舞台上でのギャグならば興味はある。

 翌週きちんと断ろうとレッスンに嫌々行くと、中学生のクソガキYくんが寄ってきた。

「キタハラさん、よろしくお願いします! なんでもやります!」

 話が進んでるし!!

「うーん、ちょっと考えてみるね」

 と言って僕はYくんから逃げた。


 さて、レッスンが始まり、イケメンお笑いグループ結成とライブ開催が発表された。

 お笑いができなくてもダンスなど、自分たちの持ち味を発表できる場、だそうで。まあそういうのに向かって芸を磨くってのはある意味胸熱ってことで……。

 その日も僕は「二時間ドラマでよくでてくる犬の散歩途中で死体を発見してしまったおばちゃんが、飼い犬が死体を食べてしまい慌てふためく」という謎の一人芝居? を披露した。前回同様受けてしまった。というかキタハラは面白いことやる、というイメージがついてしまったらしい。出るだけで笑ってもらえる。

 そしてイケメングループたちが作ったらしいコントを披露した。


 ……。


 …………。


 は?


 くそおもんねえんすけど!

 レッスン終了後、俺は、ライブに出ることを承諾した。


 イケメンたちの踏み台?

 ふざけるな!

 俺が踏み台にしてやる! 

 特撮に出るのはおめーらじゃねえ! 俺だ!

(ニヤリ)



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