第4話 社長面接

 テーブルにはA4の紙があり書いて説明をしながらその目の前の男は話し続けた。事務所の社長である。オールバックにスーツ姿、四十代くらいだろうか。

 オフィスはマンションの一室、ぎゅうぎゅうにデスクが詰め込まれ、数人のスタッフがデスクワークしていた。僕はさきほど奥の社長室に誘導されたのだった。

 履歴書を見て興味を持っていただけたそうで、これまでの活動などをはじめのうちは聞かれていたのだが、いつの間にやら事務所の今後だの映画を作りたいだのという話をした。

 真剣に聞いておかなくてはならないのだろうが、正直僕のなかでは

「なんでもいいんで特撮出られますかね」

 とさっさと訊ねたいところだった。さすがに舐めてると思われるかもしれないと、控えた。なにをやっていきたのか、と問われ「映像に興味がありまして」と曖昧に答えた。なるほどなるほど、と頷かれた。

 今一番売れている所属タレントはドラマも決まっているらしい。制作関係とも繋がりがあるとかなんとか。

 いくつも履歴書を送り、やっとひっかかった事務所である。慎重に僕は社長の夢やら実績やらに頷き続けた。

「そうですか〜」

 と相槌をうちながら、相手の手の内を探るというまさにバカしあい!

「じゃ、レッスンにおいでよ」

 きた。

 やっぱりレッスンしなくちゃいけないのか〜とがっくりきた。まあ演技力とかわかんないしなあ。スカウトではないのだ。自分がどれほど使えるのかを確かめなくてはならなのだろう。

 知り合いから話を聞くと、事務所のレッスンはぬるく、えらいやつのお気に入りには甘く、他のメンツは適当にあしらってレッスン料をぼったくっている、と。

 レッスン料も参加ごとに徴収だそうである。週に三千円はきつい。

「どうする?」

 多分いろんなやつがこの人の前で渋ったり元気に即決したり嫌がったりしたんだろうな〜。どんな態度をしようとブレないんだろう。

「わかりました」

 僕は決めた。

 ひとまず一ヶ月通ってみて、しょうもなかったら辞めよう。ネタになりそうだし。

 ただし、この目の前の社長のなんというか作りうものっぽい所作が気になった。まあタレント事務所社長ってのはこういうもんかもしれん。デキるビジネスマン風に紙で説明しながらってのは、なんかなあ〜。

 事務所の壁にはタレントが出演していたドラマのポスターが貼られていた。社長の部屋のドアに特撮のポスターがあった。あのポスターに唆されたような気もしなくもないが、ひとまず、決めた。

帰り道、なんとなくしっくりこず、喫茶店に入ってパフェをドカ食いした。

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