9話 最終回

 その後、ザルパーク国内で革命派がポール家の当主を倒したと言う噂が広まり、一気に市民の声が大きくなった。希望の国の文明開花のやり方を反対する運動が各地で起こった。希望の国はポール家が傾いた事もあり統制が取れず、ジリジリと後退せざるを得なくなった。

 数年後には、希望の国の人間はほぼザルパーク国から出ていった。革命派の願いは叶った訳だ。

 ホタルはあの後普通の学校生活を行い無事に卒業した。一方で自分がハーマン・ポールを殺した張本人だと言うことは革命派の間で伏せる事にした。その方がホタルのその後の人生の為にもいいだろうと言う事になった。大人になった時に決断をすれば良いという考えに本人も納得した。


 空に掛かった虹の下でホタルは本を書いていた。といってもこれは学校の勉強の為ではない。ザルパーク国が将来どういう道に進むべきかを考えた思考本だった。本を書く理由はザルパーク国を自分の力で幸せにすることを誓ったからだった。

「おーいホタル、ここに居たのか。さっき良い魚が釣れてな、一緒に食わないか?」

 ボーデンが呼んでいた。

「ボーデンおじさん、行くよ。ありがとう。」

「じゃ俺の家で待ってるぜ。」

 ホタルは一つ大きく手を上げて伸びをした。それから立ち上がるとボーデンの家に向かうことにした。

 ボーデンを含む革命派のメンバーもそれぞれ普通の暮らしに戻っていった。やっぱり皆んな戦う理由は貧乏でも幸福だったザルパーク国を取り戻す為だったのだ。おめでたいことにそれが叶った今は別に多くを望んでいない。平和な暮らしが出来れば良かった。



 やがてホタルは成長し大人になっていった。ホタルは書いた本が売れ、自分の考えに賛同してくれる仲間も多く集まった。選挙に当選し、ホタルはザルパーク国の政治に携わるようになった。

 希望の国とはその後ホタルの交渉により友好条約を結ぶ事になった。その時のザルパーク国の代表はホタル、希望の国の代表はソフィアだった。それからホタルとソフィアは仲が深まり、数年後にはザルパーク国と希望の国の間で初の国際結婚となった。

 二人の努力もあり、かつての市民同士の憎しみ合いも解消して、ザルパーク国と希望の国は真の意味で仲良くなる事に成功した。この幸福がいつまでも続きますように。そう願ってホタルはソフィアと手を繋いで帰って行った。

 

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幸福と武器 浮世ばなれ @ukiyobamare

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