乾いた浪漫。

殺伐とした現代社会の中で生きる人間の、何気ない日常の一コマ……。

自律神経は乱れて、健康は徐々に損なわれていくはず。登場人物たちは確かに毒を盛られているのである。それでも、彼女たちは苦しみ喘いだりはしないのである。それどころか、遥か遠い過去ーー幻かもしれない神話の世界に思いを馳せる。そのシルエットが非常に美しい。対比の構造に魅せられてしまった。

乾いた浪漫、という言葉がふと思い浮かんだ。その言葉に、一抹の矛盾を感じて、首を傾げたくなったが、やはりこの言葉がしっくりと馴染むように思われる。時勢の流れの中で、この二つはむしろ手を差し伸ばし合っているように感じられるのはなぜだろう。そんな疑問や不思議を優しく包み込むような度量の広さを感じた。

街頭に照らされて朧気な星あかりの下であっても神話は確かに息づいている。様相を変えながらも根底はしっかりと根付いているのだろう。乾燥しながらも神話世界の英雄に頭を垂れるのだ。それが愛おしく感じられた。