エピローグ すべすべ効果


 自室に戻ってシャワーを浴びると、一日の仕事も終わり、あとはノンビリモードのマコトとユキ。

 寝室のベッドで、二人は本部からの帰りに購入をした、男性モノのTシャツだけを、素肌の上に纏っていた。

 惑星サページでの、野生生物との恥ずかしい触れ合いや、その後の映像鑑賞という辱めを、少しでも楽しい思い出へと上書きしようと、マコトの提案で購入したのである。

「Tシャツ、案外と楽だね」

「本当ですわ♪」

 お互いに、寝室でのTシャツ一枚という姿を初めて見て、パートナーのいつもと違うセクシーな感じに、ちょっと不思議な気分も高まったり。

 ユキは、姿見で自分の姿を楽しんだり、ベッドに寝転がるマコトのTシャツ姿を眺めたりしている。

 マコトは、老夫婦からの感謝の手紙を、美しい微笑みで読み返していた。

「そういえば、お孫さんのお誕生日 明日でしたわ」

「そうだったね。今頃、お爺さんたちも孫娘の住む惑星に、到着しているだろうね」

 写真で見せて貰った、十歳の誕生日を迎える少女の、プレゼントを喜ぶ眩しい笑顔が想像される。

「まあ、結果オーライだね」

「ですわね…ふわわ…」

 走らされっぱなしの辱められっぱなしだった今日一日体験を思い出すと、ユキもまだ軽く、お疲れモードになるらしい

「そろそろ 寝ようか」

「ですわ…」

 大きなタレ目を眠たそうに閉じかけながら、マコトもユキも、無意識にTシャツを脱いでしまう。

 そのまま隣合うベッドへと潜り込んで、マコトは素肌に触れるシーツやタオルケットのサラサラ感触で、いつも通りの全裸になってしまった事に気づく。

「あ、また やっちゃった」

 裸で寝るのははしたないので、いつの間にかクセになってしまっている習慣を改善する意味でも、Tシャツを購入したのに。

「よろしいでは ありませんか。ベッドも、なんだかいつもより 心地良い肌触りですもの♪」

「うん。ボクもそれは 感じていた」

 触れる布の肌触りが、いつもよりサラサラスベスベとしている感じなのだ。

 なぜだろう。

 と考えて、ユキが解答に辿り着いた。

「ああ、原因はきっと これですわ」

 と言って、マコトのスベスベな細い腕を、細い指先でツゥ…と撫でる。

「? ああ」

 最初は解らなかったけれど、触れられた感触で解った。

 怪植物の餌として捕食をされた全身の産毛が、毛根から完全に脱毛をされたおかげで、頭髪と眉とまつ毛と尻尾を除く全身の肌が、無毛で艶々でスベスベにされているのだ。

 二人とも、もともと産毛そのものは少ないし細いし見えないくらいだったけれど、それでも脱毛されて痕も無い素肌は、まるで感触が違っている。

 しかも樹液の影響なのか、艶めく素肌がシットリとして、吸い付くような肌触りは官能的とさえ感じられる。

「あの植物の樹液って、お肌を保護する効果もあったのかな」

 スズメバチの体液も関係している可能性は、否定できないものの、完全脱毛のうえ痕跡も無いスベスベな白い素肌は、触れているだけで気分が上がるのも、女性本能だろう。

「マコトも スベスベですわ」

「ん…ユキだって」

「…ぁん」

 何気なく、お互いの上腕あたりを触れ合って、思いもよらず甘く痺れて、声が弾む。

「すべすべお肌って、すごいね」

「少しあぶない感じも、いたしますけれど♪」

 こういう事は、ユキにとっては楽しいらしい。

「まあ いいけれどね」

 と言いながら、マコトはベッドルームの照明を落とす。

 窓の外に遠く広がる、夜の街の煌びやかな明かりが、室内の白い壁を僅かに色づけて、セクシーな空気を手伝ってもいた。

「………」

「………」

 ユキがいつも通り、隙間なく隣接しているマコトのベッドへと潜り込んで来て、お互いに向き合って眠る。

「……マコト…」

「…ん…」

 ウサ耳をペコんと伏せて、甘えるように囁くユキは、マコトのぬくもりを求めているサインだ。

 今夜のマコトもそのサインに、ぬくもりを求める気持ちが揺すられる。

 柔らかく小さな掌を取り合って、いつもより少しだけドキドキしながら目を閉じていると、お互いの暖かさを、もっと欲しいと望んでしまう。

「………んん…」

「………すぅ…」

 それでも、肉体的にも気持ち的にも大変な冒険を乗り越えたマコトとユキは、いつの間にかユルユルと、心地よい眠りへと落ちてゆく。

 白く柔らかいお互いの肌を、寄り添わせながら。


                   ~エピローグ 終わり~

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SF ねこうさ ゆりボイン 5 八乃前 陣 @lacoon

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