回復魔法

「小春、ご飯はもう食べた?」

そう言うと、小春は軽く頷いた。

「美味しかった。奏は?」

よっぽど美味しかったのか、とても機嫌が良い。

ゆるく巻いた髪をイジりながら、笑っている。

「ステータス、見せて欲しいんだけど」

小春は鑑定スキルを持っていないらしく

私の紙を見せて欲しいと言ってきた。

「私の方の紙には

聖女とか書かれてなくて、異世界人としか書いてなかったから

多分奏の召喚に巻き込まれたんじゃないかな」

小春の紙を見ると、確かに聖女とは書かれていない。

でも、皆は小春も聖女だと思っている。

「巻き込まれる事って、あるのかな。

小春も聖女として召喚されたんだと思ってたけど」

少しの謎と、不信感。

どうして私と小春は死んだのか。

召喚に小春が巻き込まれたのは何故?

そんな疑問を持ちながら、小春のステータスを見ていた。

「聖女様、怪我人の処置をよろしくお願いします」

部屋に飛び込んで来た兵士三人。

一人は酷い怪我を負っている。

「奏様、どうか私の部下をお救い下さい」

辛うじて息が出来ているくらいの怪我人をソファに寝かせ

気道の確保をする。

「魔法って、どうしたら」

そんな私の横から、メリルさんが声を掛けてきた。

「手に魔力を感じろ。

治れ、と思えば治る筈だ」

言われた通り、治れと念じると

手がじんわりと暖かくなった。

「最初だが、上出来だろう」

兵士の傷口はゆっくり塞がっていき

苦しそうだった表情が少しだけ和らいだ気がした。

「魔力切れか。今日はゆっくり休め。

明日から訓練をする」

低血糖のようになり

ガクガク震える手足をどうにかして動かそうとすると

メリルさんがお姫様抱っこで部屋まで運んでくれた。

魔力切れって、こんなにキツイんだ。

「ありがとう、御座います」

突然魔法を使った私は

魔力切れというものになったらしく

ギルさんがポーションを持ってきてくれた。

「大丈夫か?

大怪我を治したって聞いたけど」

ゆっくり休めよ。とリンゴを剥いて

横で話をしてくれた。

「魔力切れは特訓するしか無いんだよ。

切れたら飯食って、寝て。

それの繰り返し。剣と違って怪我はないけどな」

それだけ聞くと、大変そう。

明日からまた頑張ろうな。

そう言ってリンゴを一切れ齧り

ギルさんは帰っていった。

入れ替わりでルークさんが見に来たけど

やらなければならない仕事があるらしく

注意だけしていってしまった。


明日からの特訓、頑張ろう。

そう思いながら

私は、フカフカのベッドで深い眠りについた。

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聖女の1人として転生したのですが、保有スキルがループってどういう事ですか ただのうさぎ @Rabi0916

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