第35話 喫茶アイビー

君がいない春が訪れようとしている


僕はあれから仕事を辞め、幸いなことに貯金もある程度ありそれを崩しながら生活していた。


今も彼女の両親とも食事に行ったりしていた


二人とも最初こそぽっかりと何か抜けたようなそんな状態だったが次第に前向きに進もうと今は過ごしている


彼女の手紙にあった婚姻届を出していないことについて

そんな事は僕は分かっていた

ご両親に相談して僕は籍を入れていた


君が知ったら怒るかな

悲しむかな

それでも君しか僕の心の中に居られない

僕のわがままをどうか許してほしい


喫茶アイビーへも報告に行き

仕事を辞めた後も何度も足を運んでいた


店主にどんな風に僕は映っていたのだろう

「順くん、君さえ良ければうちで働いてみないかな」

いつものように優しい表情と声でそう言ってくれた


二つ返事でよろしくお願いしますと、そう伝えた。


今、僕はシャツを着て毎日珈琲の香りに包まれ君との思い出の場所で過ごしている


前よりも上手く珈琲が淹れられるようになったんだ

君がまたふらっと訪れるんじゃないかな

そんな事すら考えてしまう


春の桜が風で揺られて舞う


窓際に珈琲を二つ


珈琲を飲める理由が貴方ならば

珈琲を飲める理由は貴方でした



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珈琲を飲める理由が貴方ならば ましろ。 @tomoki0316

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