いつの間にか隣で寝ている幼馴染
「すやぁ……」
朝起きると、隣で愛理が寝ていた。
愛理は僕の幼馴染であり、家も隣同士。確かに俺の部屋に上がり込むことはあったが――
「何でお前が寝てるんだ……」
――いつの間にか俺の隣で寝ているのは初めてであった。
時計をチラッと見るにまだ朝の5時だ。こんな時間に目が覚めるなんて……間違いなく愛理のせいである。
二度寝しようとも隣で無防備に寝る愛理の寝顔にドキドキしてしまい、二度寝できない。完全に目が覚めた。
くそ、なんでこんなことになってるんだ。そう思いながら、俺は身体を起こそうとした――その時である。
「……ぅん……翔ちゃん……愛理を置いてかないで……? えんぴつ運動会……」
何故か腕を引っ張られベッドに戻される。どうなってやがる!起きてたのか!?いや、ならなんで引き止めたし!!しかも『えんぴつ運動会』とはなんだ? パニックになりつつ状況を把握するために周りを確認すると何か暖かい感触を感じた。
(こいつ……カイロを全身に貼ってやがる……)
俺は呆れつつもゆっくりと顔を戻した。寒さに弱いにも程がある。
そして再度寝返りを打ち天井を見る形になった。だが俺の腕は愛理の手で覆われており動かない。
つまり今、彼女は幸せそうな表情をして僕の布団に入り込んで一緒に寝ているのだ……もういいや考えるのめんどい……もう一度寝よ……。
俺は思考を放棄した。きっと疲れていたに違いない(確信犯)。まあでも気持ち良かったです。えんぴつ運動会。
えんぴつ運動会。
えんぴつ運動会……。
……だーっ! 寝られん! えんぴつ運動会が気になりすぎて寝られん!!
ついでにカイロの熱がヤバすぎて寝られん!!!
***
あれからしばらく時間が経つが愛理が起きる気配がない、ずっと熟睡しているらしい。俺にはこれが逆に不気味だった。何故ここまでして起きないのか。
試しに彼女の頬っぺたを突いてみるが全く反応無し。流石に不安になるなこれは。
「おい愛理さん」
声をかけてみたが結果は同じだった。というかそもそも返事すら無かった。もしやえんぴつ運動会の夢を見てて起きられないとかそんなベタなことじゃないだろうな?
いやえんぴつ運動会がベタな訳がない。俺はどうかしている。
はぁ……しょうが無い。もう愛理を起こすしかないようだ。仕方ないので俺は強硬手段に出ることにした。
とりあえず耳元まで近づいて小声で言ってみることにした。これなら聞こえるかもしれない。
「えんぴつ運動会、まもなく閉会式だぞ?」
よし、完璧じゃないか、しかしここで1つの問題が浮上した。
「えんぴつ運動会って、そもそも閉会するのか?」
という疑問が出たわけである。考えてみれば当然のことである。えんぴつ運動会という言葉を今日初めて愛理の口から聞いたのだから、俺がえんぴつ運動会の詳細について知る由も無いはずだ。
閉会式が何を指すかも不明であるため、結局は『お前、いつになったら起きるんだよ?』と言うだけであることに気づいた。なんか自分がアホらしくなってきたな、俺の睡眠を妨害しといてこの有様である、許せんわ。
こうなれば意地でもえんぴつ運動会を閉会させてやる……待てよ? よくよく考えれば別にこのまま放置すれば良くないか? うん、その方が平和的かつ合理的であるように思えるな。
よし決定っと。じゃあそろそろ――と思い、立ち上がろうとしたその時である。
またしても腕を強く引っ張られたのだ。不意打ちだったためバランスを崩してしまった俺は仰向けのまま再び倒れ込んだ。どうやら先程腕を引っ張った犯人はまだ眠っている模様。無意識にもほどがある。
一体どれだけえんぴつ運動会したいんだこいつは?
「おいっ愛理!いい加減にしろ!!」
我慢の限界に達した俺はつい大きめの声を出してしまった。それに気づいた彼女は目を覚ますことになる。だが少し遅かったようであった。彼女は目を開けるとこちらを向いて一言口を開いた。
「ねぇ翔ちゃん……」
「あ?」
「えんぴつ運動会しよう……?」
何言ってんのこいつ……? さっきまでの意識は無いらしく普通に会話し始めたし。まだ夢の中であることは確かなのに本人は自覚していない様子だった。夢と現実の区別も付かないとは相当重症である。マジで早く病院に行った方がいいと思いますね。はい。
全身カイロだし。
「いやしないけど」
「えぇ〜なんで〜? 私と翔ちゃんでえんぴつ運動会したい……」
「いや、意味わからんから……」
どうせ無理だと理解しつつも俺の意思を伝えると、愛理は勝手にえんぴつ運動会を始めた。どうやら本日2回目らしい。
「はい!まず1回戦、鉛筆を持つ方の手が空いている人がいるので負けでーす」
1回戦目の結果はまあ想像通りであるが無惨なものとなる。開始早々『はい終わり〜』的な感じで終わったもんね。
その後もえんぴつ運動会を繰り広げていたが次第にエスカレートしていきいつの間にかプロレスまで始めていた。
そして気付けば俺の全身にもカイロが貼られて布団の中に閉じ込められており、気がつけばえんぴつ運動会は幕を閉じていたのであった……。
俺は全身にカイロを貼られた挙句、隣に全身カイロ女がいる上、布団の中に幽閉されているので、体温が1億度まで上昇し、その結果地球が滅んでしまったが、それはまた別の話である。
AIのべりすと怪文書集 NkY @nky_teninu
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