重課金式コインランドリー
コインランドリーに洗濯物を持っていく。
大小さまざま、ありったけの洗濯物をぶち込んで、コインを入れると、ドラムが回りだす。
お金を投入すればするほど回転は早まるシステム。今日は1トンくらい洗濯物があるので、僕は一生懸命お金を入れて回す。
すると洗濯機の回転速度はどんどん上がっていき、そしてついに……
「うわああああっ!」
バシャアッ! ドラムから大量の水が飛び出し、泡があふれ出し、どんどんと水位が上がっていく。
そして、世界は真っ白な泡の中に飲み込まれた……。
緊急で救命ボートを召喚できたことで、僕は命からがら脱出することができた。危うく溺れ死ぬところだったよ……あぶないあぶない……。
洗濯機は三日三晩回り続け、大量の水と泡を吐き出し続けた。すっかり洗剤にまみれたこの海で、僕はただただ途方に暮れるしかなかったのだ。
「おーい!」
すると、洗剤まみれの海の真っただ中で、誰か女の人の声がした。遠くに目立つオレンジ色をした救命ボート、そしてその上に人間らしき影が一人。僕はボートを漕いで、彼女に近づいていった。
「こんなところでどうしたんですか?」
「ああよかった! やっと人を見つけられた!」
彼女は安堵のため息をつくと、僕に向かって笑顔を向けた。見た感じ20代前半だろうか? きれいというよりはかわいい系の顔つきの女性だ。
彼女の顔には見覚えがあったけど……思い出せない。どこで出会ったんだっけ?
「あなたがいれば、この掃除機を起動できます!」
「掃除機?」
「はい! ありとあらゆるものを吸い込む掃除機です! この泡の海も全部、ぜ~んぶ!!」
女性は僕の手を握ると目を輝かせながら言った。まるで子どものように無邪気な彼女だけど……なんだろ、なんか怖いんだよねぇ……。なんというか、彼女の目って、どこかうつろっていうか、何も見てないというか。
「でも、人間が2人いないとこれって起動できなくって。だから、お願い! 協力してくれませんか?!」
断る理由はない。それにこのままじゃあ、僕だって溺れ死んでしまうし、何より、彼女を怖く思った僕は言われるままに掃除機なる機械の前に立ち、そのハンドルを握った。
「ではスイッチオン!! えいや!!」
女性が謎の掛け声を上げると同時に、巨大な吸引口がついたゴミ箱のような物体が出現して、泡の中から大量の水を勢いよく吸っていった。
すごいパワーだよ! この掃除機!! 1時間もしないうちに泡の海は消え去って、ついでに地球も消え去った。
僕と女性は宇宙空間に放り出されてしまいました。あ、あの星とか綺麗だね~なんて話している場合じゃないですよ! 酸素がない!? 真空状態になってしまったみたいだ! こうなったら仕方ない……最終手段に出ようじゃないか! もうやるしかない!
僕は女性を押し倒して覆いかぶさるように抱きしめると、キスをしながら宇宙遊泳を開始した。そう、人工呼吸である!!! 結果から言うと、なんとか助かりそうだよ。だって女性の胸が上下し始めたから……ふぅ……これで安心っと。
その後しばらくして僕らは無事生還できたわけだけど……正直二度とやりたくないよね……。
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