雨は、どうして降るの?

@ramia294

第1話

 ミノリちゃんは、とても賢い子供でした。


「お父さん、雨はどうして降るの?」


 ミノリちゃんは、お父さんに尋ねました。


 ミノリちゃんは、三歳の女の子。

 キャッ、キャッと笑えば、空も星も笑い、風だって思わず踊りだす、可愛い女の子です。


「お空を見上げると雲が、浮かんでいるだろう。雲のお父さんは、空なのさ。雲はお空から地上を見て、とても素適な場所を見つけると、その場所にお嫁に来る。つまり、雨の正体は雲。結婚相手を見つけて、地上に降りる時、その場所は雨になる」


「ふーん。でも、お空には、雲がいっぱい浮かんでいる時があるよ。みんな結婚しないの?」


「そう、それなんだ。あれは、相手を選び過ぎて迷った雲や、秋の空に漂うのが、楽しすぎて、いつまでも親元である空から離れる事が出来ず、チャンスを逃した雲さ」


「結婚出来なかったの?」


 ミノリちゃんは、とても賢い子供でした。


「そうさ。だからミノリも、もう少し大きくなると、小学校へ行くだろう。友だちを作る事も大事だけど、一生懸命勉強して、人を見る目を作る事も大事だよ。そうすると、運命の女神さまが、とっても素適な旦那様をミノリの元に連れて来るだろう」


 それから、幾度か季節が巡り、時が流れました。


 ミノリちゃんは、とても賢い子供でした。


 お父さんの言う事を真面目に実行したミノリちゃんは、二十歳になると、とても素適な男性を連れて帰り、お父さんに紹介しました。

 とてもハンサムで、礼儀正しく、頭の良いその人は、爽やかな笑顔に、性格の良さも滲み出る好青年でした。


「結婚をしたいの」


 まだ学生では、ありましたが、とてもしっかりした考えを持った二人に反対する理由は、ありません。

 完璧過ぎる青年には、文句の付けようも無く、不満な部分は、探しても見つかりません。


 お父さんは、我が娘の人の見る目があり過ぎる事を恨みました。


 ミノリちゃんは、とても賢い子供でした。

                                                             

 お父さんの心の中に灯った喜びの火は、秋風に吹かれて、消えそうになったり、大きくなったり。


「少しは、反対したかった」


 お父さんは、雲の話なんかするのでは、なかったと、ミノリちゃんの早過ぎる結婚に、ちょっと寂しく思うのでした。



          終わり

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨は、どうして降るの? @ramia294

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ