シャムエルはかつて、聖女リシアに故郷を救われた。
故郷に蔓延していた疫病を、神から賜った聖なる力で癒してくれたのは他でもない聖女リシアだった。
そのとき、聖女リシアにたいして、彼はある想いを懐いた。
斯くして、シャムエルは医術師の道を選んだ。
時は流れ、シャムエルのもとに流れてくる聖女リシアの噂はどれも悪いものばかりだった。とどのつまり、彼女は嫌われていた。
万病を癒す力。いまでこそ「医療」「医学」「医術」とされるものですが、ひと時代を遡ればそれは「神の御業」「奇蹟」と称されるものでした。これは、神の奇蹟と人の医療がちょうど入れ替わろうとする時代の物語です。
素晴らしい世界観と筆致でした。
医の力を考えさせられる昨今、ぜひともご一読くださいませ。