第68話 それって、あそこ?

 頭が痛い。

 また上司にぶん殴られて、研修期間が延長になったわ。


 まあ、今回は完全に私のミスだし、反省しないとね。


 さあ、気持ちを切り替えて、今日もお仕事がんばりましょう。


 では、改めて、ミャリュエル星の環境を整えましょう。


 まずは熱すぎるみたいだから、冷やさないとね。


 神の力発動よ。

 ミャリュエル星を冷やしなさい。


 よし!成功ね。

 これで冷えたようね。


 さあ、次よ!!


 えーと、何をすれば良いの?


 ちょっと調べてみましょうか。

 神が星作りの手順を知らないのは、カッコワルイし。


 ん?

 これは?


 これで完璧!人間を全滅させまくってる無能な邪神でも出来る星作りマニュアル?


 な、何よ、これは!?


 とてつもなく腹立たしいタイトルが付けられているわね!


 私は無能な邪神ではないわよ!


 え?


 まさに、お前のためにあるマニュアルだなって、ツッコまれた気がするわ。


 気のせいよね?

 気のせいに決まっているわね!


 私は最高神になる神(見習い)なのだから!!


 え?


 ドヤ顔すんな邪神って、ツッコまれた気がするわ。


 これも気のせいよね?


 まあ、良いか。


 私は無能な邪神ではないけど、このマニュアルを読んでみましょう。


 うん、なるほど。

 まずは海を作れば良いのね。


 その後、海の中に単細胞生物を作る。

 光合成をさせて酸素を作らせる。

 魚類、節足動物、貝類などの生物に進化させる。

 陸に植物を生やして、海の生物を陸で暮らせるよう進化させる。


 手順が多くて面倒ね。


 まあ、神の力でパパッと、やっちゃえば良いか。


 では、発動よ!


 酸素、植物、動物、準備完了ね。

 やっと人間が生まれても、生きていけるようになったわ!


 さあ、今度こそ人間を誕生させましょう。


 ミャリュエル星に、ふさわしい人間よ、生まれなさい!!

 私のように完璧な人間よ!!


 さあ、神の力発動!!


 成功ね。


 人間が生まれたわ。


 後は、人間たちを信じて見守るだけね。


 まあ、この私が作ったのだから、何の問題もないでしょうけどね!!



 約二十万年後。


 今日も暇ね。

 人間の観察も飽きちゃったわ。


 今の人間たちは、ようやくコーンカツ星くらいの文明レベルになったわ。


 ここまでは、特に問題もなく、順調に命をつないでいるのよ。


 ところで、いつまで私は、この星の管理者をしてれば良いの?


 もういい加減、研修終了で、正式な神に昇格しても良いと思うのだけど……



「神様ー!大変ッスよ!!」


 マイケルがやって来たわ。


 なんだか久しぶりに聞く台詞ね。


 何かあったの?


「神様!人間が絶滅しそうッス!!」


「な、なんだってーーー!!!う、ウソでしょ!?私が作った人間なのよ!?」


「本当ッス!」


「そんなバカな!?それで原因は、なんなの!?」


「少子化ッス!人間たちが結婚相手に高望みをしているせいッス!!」


「ええ!?それって、まるでコーンカツ星みたいじゃないのよ!!」


「その通りッス。コーンカツ星とまったく同じッスよ!」


「な、なんで、こんなことになるのよーーー!!!」



 この後、ミャリュエルは、また人間相手に悪戦苦闘することになる。



 めでたくなし、めでたくなし、おしまい。

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救世の神と天使の悪趣味冗談 三国洋田 @mikuni_youta

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