07.あったかご飯は意外にも和食だった

(殺すと死ぬの概念がない……でもだとしたら年をとったらどうなるとか、病気があるのかとか、ケガはスオウさんがしていたからあるんだろうけど……)


 この世界への疑問が沸いてきた。とりあえず、お腹は空いたのでスオウさんとシオン王子と食事をしながら聞いてみることにした。


 連れてこられた食堂は思っていたより広く、死神やっかいなニート的には広いところ怖い案件だったけど、あまり周りを見ないで食べることにした。


(しかし、これ……お粥だなってかすごくヨーロッパな世界と思わせておいて食事が和風とか意外性がすごい)


 僕の目の前にある食事は、お粥、梅干し、海苔、みそ汁、焼き魚、お新香という昨今失われつつある日本の朝食である。ちなみに死神やっかいなニートの食事はいつも和食だったので、いきなりパンとかビュッフェスタイルとかだったら臓物が負荷で死んでいたかもしれないのでとてもありがたい。


 僕はお粥に梅干しをのせて食べてみた。はつみつ梅なのか、柔らかい酸味が舌を刺激し、どことなく甘いお粥によく合う。


(胃があたたまりますわー)


「うまいか??」


「はい、すごく僕の元の世界に近い食事で安心してます」


「良かった、クイル様に気に入って頂けて」


「告死天使様はちまくて痩せてるから沢山食えよ」


 そう微笑んでくれるふたりの前にも同じようなものが並んでいる。どうやら食事内容は固定みたいだ。


 僕は、お味噌汁を飲んでみた。油揚げとわかめにネギの入った味噌汁は湯気を立てていて、味もすごく好みだ。多分出汁はアゴ出汁みたいで、ちょうどよく出されていた味噌汁と似た味わいだった。


 少し食事をして落ち着いた頃に、僕はふたりにこの世界について質問してみることにした。何も知らないからこれからどう生きて行くかもぼんやりとしか想像できていない。それをちゃんと聞いて確認したいと考えたのだ。


「あの、この世界について色々お聞きしたいのですが……」


「ああ、もちろん、この後、説明しようと考えていました」


 そう言って、一冊の本をどこからともなく取り出した。

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死神と呼ばれる忌み子でひきこもりの僕が死のない世界に召喚されて救世主になりました、タスケテ…… @hiyokomen

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