true love

味醂

true love

僕は好きだった、彼女のことが…


高校に入学してすぐに、僕は君を見つけた。

君はどんな時も輝いて見えたし、誰よりも可愛かった。

僕はいつからか君のことが好きになった。


僕は君に見合う男になるために、きつい部活に入り練習に励んだ。

勉強だって怠らなかった。

学校のマドンナである君と平凡な人間である僕が釣り合うために努力を惜しまなかった。


でも、この2年で君に振り返られることはなかった。

君はいつも遠くにいる。

このしんどい生活をやめるために君を諦めることも考えた。

でも君の美貌がそれを許さなかった。


しかし、高校2年生が終わるかという頃、突然君に呼び出された。

「野上くん、私と一緒に帰らない?」

彼女のその言葉が、俺の2年間の全てを報いてくれた。


そこからは、流れに任せるように俺たちは交際を始めた。

マドンナである彼女との関係は誰にも打ち明けなかった。

自慢したいという気持ちなんかよりも、彼女との関係を守りたい、その気持ちが大きかったからだ。


彼女との日々は、全て夢のようだった。

色々な場所に遊びに行ったし、キスだってできる関係になった。


「ねえ、君は僕のどこが好きなの?」

ある時僕はそう聞いてみた。

「野上くんの頑張っているところだよ。」

彼女はそう答えた。


僕は付き合う前以上に頑張った。

頑張っているところが好き、というその言葉を信じてただひたすらに、彼女を失わないために頑張った。

彼女がよくいう「頑張って」は、全ての疲れを忘れさせた。


彼女との関係が1年を過ぎた。

「なんで僕と一緒にいてくれるの?」

僕はそう聞いた。

「頑張っている野上君が好きだからだよ」

彼女はそう答えた。


僕はもっと頑張った。

この頑張りで彼女は満足するだろうか、そんな不安が消えるように、僕は誰よりも努力した。


僕は幸せだろうか、最近そんなことを考え始めた。

憧れの人の近くにいる、それだけで幸せだったはずなのに。


「なあ、最近少し悩んでいるんだ、」

僕は初めて彼女に相談をした。

「頑張って!野上君なら絶対にできるよ」

彼女は僕をそう励ました。


「頑張れ」と言う言葉がいつしか重く聞こえるようになった。

でも、彼女を失うことだけは避けるために、僕はまた頑張った。

僕は自分の心がわからなくなった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ある日、クラスで不思議ちゃんと呼ばれている長瀬さんに呼び出された。

「野上君、疲れてるよね」

「え、、いや、僕は大丈夫だよ」


長瀬さんは僕の目を見て言った。

「頑張らなくてもいいんだよ」


僕は泣いていた。

あぁ、僕が欲しかったのはこの言葉だったのか、、

そう気づいたとき、心は軽くなった。


彼女が何を考え、何故僕にそんな言葉をかけてくれたのかはわからない。

でも不思議ちゃんは、僕に大切なことを教えてくれた。


「頑張れ」と言う言葉が必ずしも相手を応援する言葉であるとは限らない。 


その人を好きになるということは、相手の理想の姿を好きになることではない。

その人のマイナスな部分も理解し、受け入れることがその人が好きということである。


僕はただ、マドンナの彼女の彼氏であるという自分自身を捨てたくなかっただけなのかもしれない。


でも、彼女と過ごした1年は嘘ではない。

彼女を好きでいたことは事実である。


「今までありがとう、そしてさようなら」

彼女に僕はそう告げた。



















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