39 冬休みと、雪の精霊
12月23日が終業式で、24日の夜、家族でクリスマスのお祝いをした。
お母さんからは、図書カードをもらった。
お父さんからは、なんと! 120色の色えんぴつをもらった。すごい、ビックリだ!
25日の朝、サンタさんのカッコウをした、大家さんが家にきた。
クリスマスの歌を歌いながら、楽しそうにやってきた大家さんは、ダンボール箱に入った、たくさんの真っ赤なリンゴを、プレゼントしてくれた。
26日。
今日の空は、なまり色。すごい雲だ。雪が降りそう。
アタシが家を出ると、家の前に、シオンがいた。
黒いマント姿だけど、フードはかぶってない。
約束はしてないし、16日に会ってから、会わなかったので、ちょっとビックリした。
まあ、アトリエに行くのだから、いっしょに行ってもいいんだけど。
そう思いながら、「おはよう」と声をかける。
まだ昼前だから、おはようでいいはずだ。
シオンは無表情で、なにもしゃべらない。
どうしようって思っていたら、シオンが口を開いた。
「行くぞ」
シオンは無表情のまま、歩き出す。
アタシとシオンは、ネコ神社まで、無言で歩いた。
ネコ神社には
リリリの森は、とてもしずかだ。
あわく光る花やキノコがないし、いつもより暗い感じ。
でも、千穂が懐中電灯を持っているし、シオンもいるからこわくない。
妖精たちもいるけど、とてもしずかだ。
いつものように、千穂からもらったアメをなめながら、アトリエに向かった。
アトリエに着くと、「メリークリスマス」と言って、
鈴絵さんとひなちゃんは、うれしそう。
ルルカはなんだか、キンチョウしてるみたいだ。
アタシたちも、「メリークリスマス!」と返した。
アイビスは、先にイスに座っている。
木の、大きなテーブルの上には、ローストチキンと、ポテトサラダと、チョコレートケーキなんかがあった。
空色のショルダーバッグを、若草色のソファーに置かせてもらったアタシは、マントをぬぎ、うでわを鈴絵さんに外してもらったシオンと、千穂と共に、席に向かう。
うれしそうな鈴絵さんと、ひなちゃんが、アタシたちのお茶を用意してくれたあと、みんなでごちそうを食べたり、お茶を飲んだりした。
そして、チョコレートケーキも食べた。全部、おいしかった。
鈴絵さんが、この王国の、昔話をおしえてくれたりもした。
ひなちゃんが、もうすぐ、兄が帰ってくると、うれしそうな表情でおしえてくれた時だった。
「――あっ、雪っ!」
千穂の声に、ドキッとした。
窓を見れば、真っ白な、雪。
ニャハハハ
だからか、うれしい気持ちがあふれ出して、ニヤニヤしてしまった。
そのあと。
なにか、雪ではないものが、空に浮いているのが見えた。
「――あれっ、なにっ? 子ども? 妖精じゃないよね。なんか、妖精よりも、大きいし」
「あっ、ツムギちゃんは知らないのか」
そう言って、ひなちゃんが、ニコッと笑う。
「あれはなに?」
アタシがたずねると、ひなちゃんがおしえてくれた。
「あれはね、雪の精霊だよ」
「雪の精霊……なんか、本で読んだ気がするんだけど、あまり覚えてないな」
アタシがつぶやくと、ひなちゃんがクスリと笑う。
「ダイジョウブ。ワタシもよくわからないから。っていうかね、雪の精霊って、しゃべらないから、この王国の人たちも、みんなよくわからないんだよ」
「そうなんだ……」
アタシはふたたび、窓の外を見た。
プカプカ浮かぶ、精霊たち。
ふわふわの長い髪の毛は、うすい青。
目の色も同じだ。
ふんわりとしたドレスは、雪のような白なのだけど、キラキラと、かがやいているように見えた。とてもキレイだ。
うすい青の目と、目が合う。
うれしそうにほほ笑む、雪の精霊。
かわいいなぁ。キレイだし。
しあわせな気持ちで、アタシは笑った。
そのあと、鈴絵さんにうでわをはめてもらい、マント姿にもどったシオンと、千穂と、ひなちゃんといっしょに、外に出た。
雪は、まだ降っている。
雪の精霊たちが、クルクルと、楽しそうに回った。
真っ白な雪と、キレイでかわいい、雪の精霊たちをながめていると、ユニコーンの姿の、ルルカが、かけてきた。
雪の精霊を見上げるルルカ。なんか、絵になるなぁ。描きたい。
ルルカが、外に出てくるのはめずらしいし。
ユニコーンの姿になってるの、だいぶ、ひさしぶりに見た気がする。
そんなルルカのすぐ近くまで、シオンが行ったけど、ルルカはにげずに、雪の精霊たちを見ていた。
「冬もいいね」
雪の精霊たちを見上げながら、アタシはニコリと笑って、そう言った。
すると、千穂とひなちゃんがクスクス笑って、「そうだね」と返してくれた。
シオンとルルカと別れて、ニャハハハ島にもどると、雪が降っていた。
なんだかうれしくて、アタシは笑った。
すると、千穂とひなちゃんも、楽しそうに笑った。
家に帰ってから、アタシは、白い、スケッチブックをとり出した。
そして、雪の精霊たちを見上げるルルカの絵を描いた。
もちろん、ユニコーンの姿のルルカだ。
楽しくなって、雪の精霊たちを見上げる、ユニコーンの姿のルルカと、シオンの絵も描いた。
♢
あっという間に、12月28日になり、アタシと両親は、ニャハハハ島を離れた。
お父さんの実家に行って、年こしをして、お母さんの実家にも行った。
両方の家で、お墓参りをした。
あと、新年になったあと、近くの神社に行ったりもした。
1月5日にはニャハハハ島にもどり、神社のそばにあったお店で買ったお菓子を、大家さんの家に家族で持って行ったりした。
つぎの日。
シオンと千穂とひなちゃんが家まできた。
ひなちゃんが、「お兄ちゃんのおみやげだよ! 1つだけどあげる!」と言って、京都のお菓子をくれた。
それを受けとったあと、アタシは空色のショルダーバッグと、神社のそばにあったお店で買ったお菓子の箱を入れた紙袋を持って、家を出た。
島にも雪はあるんだけど、エフィーリーリア王国の方が、多いらしいので、行くことになったのだ。
4人で、ネコ神社から、ふしぎな泉に行く。
ドラゴンはいつも通り、のんびりしてた。泉はこおっていなかった。
リリリの森は、雪で真っ白。
雪の上を歩くのはドキドキしたけど、サクサクと、うまく歩けた。
リレイ湖もこおってなくて、いろいろな色の、大きな鳥がいた。
今は雪が降ってないけど、たまに雪の精霊が、空中でおどり、あそんでた。
アタシたちはアトリエに行って、ルルカをさそい、ルルカもいっしょに、雪であそんだ。
ルルカはユニコーンの姿で、雪の上をかけ回ったり、人間の姿になって、雪玉を作ったりして、楽しそうにはしゃいでた。
アタシたちも、たくさんあそんで、たくさん笑った。
しばらくすると、
アトリエで、みんないっしょに、ココアを飲んで、クッキーを食べた。
アタシが持ってきたお菓子も、みんなで食べた。
みんな、よろこんでくれたので、うれしかった。
その日の夜、アタシはたくさん、絵を描いた。
白い、スケッチブックに、好きなだけ。
楽しかった冬休みの思い出を、描いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます