7 エフィーリーリア王国
アタシの目の前には、金色の角と目を持った、藍色の毛並みのユニコーン。
「えー!? なんでっ!? なんでっ、ユニコーンがいるのー!? なんか小さいけどっ、子どもっ?」
あっ! 立った! っていうか、すごい、おびえたような目をしてるんだけど……。
アタシ、なにもしてないのにっ! なにもしてないよねっ!?
えっ? 顔のせいっ?
「――あっ、あのっ、ごめんっ! ごめんねっ! アタシッ、顔がこわいみたいでっ! 前っ、住んでたとこでっ、女の子にこわいって言われて、泣かれたこともいっぱいあってっ! でもっ、この島にきてからは、そんなことなかったんだけどっ! アッ、アタシッ、あなたをこわがらせるつもりはなかったのっ!」
「なにをさわいでる?」
「――えっ?」
体にひびくような、低い声。
おどろいたアタシがふり向くと、そこには、オレンジ色のドラゴンと、2本足で立っている、白黒のネ――。
「――ネコッ!? ネコが服着てるっ!」
「ムム。ネコとはシツレイな。オレサマは、ケットシーと呼ばれる、ほこり高き種族なのだ」
「あー!! ケットシーッ! そうだっ! 喫茶店で見たやつだっ! あの絵と同じ服着てるっ!」
アタシは、2本足で立つ、白黒の毛並みのネコを、シゲシゲとかんさつする。
ふつうのネコより大きいな。耳は、ふつうのネコよりも、すこしだけ長いかも。
シッポはふつうだ。目は大きくて、クリクリしてる。
あざやかな緑色の目は、エメラルドみたい。
深緑色の、貴族みたいな服を着て、クツをはいてる。すごいな。
「オヌシ」
「えっ? オヌシ? なんなのっ!?」
「よい匂いだな。気に入ったぞ。オヌシの名は?」
えらそう。貴族みたいな服を着てるし、えらいのかな?
「……ツムギ、です」
「ツムギか。
「えっ? はい、そうですけど」
「フム」
「あのっ、なんでっ、アタシのこと、知ってるんですか?」
「ウワサになっているからだ。ニャハハハ小学校の、転入生というのは、オヌシのことだろう?」
「そうですけど……だれが、ウワサを?」
「島の人間たちや、妖精たちや、ネコたちだな」
「この島にきた日と、学校まで歩いた日と、今日しか、外に出てないのに……」
「オヌシが外に、あまり出なかったとしても、親は出ていたんじゃないのか? それに、おしゃべりな大家がいるだろう? 大家が、ツムギちゃんはイケメン女子で、ハンコウキって、出会った人間たちに、言いふらしていたらしいぞ。それに、妖精たちは勝手に、家に入るし、ネコたちはよく集まって、ジョウホウのコウカンをするものだからな」
「ネコの集会?」
「そうだ。それで、なぜ、オヌシはここにいるのだ?」
「こっ、ここっ、どこですかっ?」
「ここは、エフィーリーリア王国にある、リリリの森だ。ここの泉は、ふしぎな泉と呼ばれているのだ」
その言葉を聞いて、アタシはとまどい、辺りを見わたす。
うん、森だ。池みたいなのがある。あれが泉なんだろう。橋はない。
ここは、ネコ神社じゃない。
「どうしよう。お父さんとお母さん、心配してるかも……アタシ、お父さんとお母さんといっしょに、ネコ神社に行ったんです。ネコ神社の橋をわたろうと思ったら、うしろから声がして、妖精がいたんです。そうしたら、ここにいて……」
「妖精か。フム。よく知らない相手は、ケイカイするのだが……。むじゃきなところがあるのでな、いたずらをする妖精もいるのだ」
「……あの、アタシ、帰れますか?」
「ああ。あの泉と、ネコ神社の池には、ふしぎな力があるのだ。その力を使って、異世界に、転移することができるのだ。すごいだろう」
「……大家さんは、妖精を見ることのできる人が、妖精におねがいすると、異世界に行けるって、言ってましたけど……」
そう言いながら、転移って、ファンタジー小説や、アニメでは、しゅんかん移動みたいな、魔法だったなと思った。
少女向けのマンガや、小説は、読んだことがないんだけど、アニメは自由に見られるし、女の子っぽくない表紙の、ファンタジー小説を読んだりする。
女の子が好きそうな表紙じゃなければ、学校の子にバレても、笑わられたり、いろいろ言われたりしないからだ。
まあ、ウソのウワサを流されることは、よくあったけど。
「ふつうの人間には、魔力がないからな。魔力を持ち、転移が使える者にたのむしかないのだ」
「そうですか……妖精は、魔力があって、転移の魔法が使えるってことですね」
「ウム。オレサマも使えるぞ。あと、ふつうのユニコーンは、魔力があっても、転移できないが、そこにいるユニコーンは、魔力が多いからか、使えるのだ。ドラゴンもな。今はオレサマがいるし、オレサマも向こうに行くから、オレサマが連れて行くがな」
「ありがとうございます!」
アタシが深く頭を下げてから、上げた時には、もう世界が変わってた。
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