14 鈴絵さんの家で、お茶会
千穂の家は、赤い屋根と、白いかべの、2階建ての家。
そして、千穂のおばあさんの家は、うす茶色の屋根と、クリーム色のかべの、1階建て――平屋だった。
庭には、小さな畑と花壇がある。
花壇には、たくさんの花が咲いている。そして、妖精たちがいた。
妖精たちは、アタシたちに気づくと、ワー! キャー! さけんだ。
それから、「ツムギキター!」と、かわいらしい声で、元気よくさけびながら、家の中に入っていった。
アタシたちは顔を見合わせ、笑ったあと、白いドアから家の中に入った。
なんだか、ホッとする匂いだ。
ゲタ箱の上には、白い花瓶と、チューリップ。
3人で、クツをぬいで家に上がる。
パタパタとスリッパの音がして、メガネをかけた女の人が現れた。
髪がすごいっ! あわい、青紫色の髪の毛は、アジサイみたいだ。
短い髪だけど、すごい目立つ。
アタシには、こんな色の髪の毛で、外を歩く自信はないなぁ。
それにしても、すごいキレイな人だ。千穂に似たふんいきで、トウメイ感がある。
何才なんだろっ?
耳にはイヤリング。あれ? なんか、耳がすこし、とがってるような。
鼻も高いというか、外国の人みたいな感じがする。
髪の色のせいじゃないよね? 目は黒いし。
そういえば、大家さんが言ってたな。
そうか。この人が千穂のおばあさんの、鈴絵さんか。
鈴絵さんの首には、桜の形の、ネックレス。
背は、アタシよりも高いけど、すごい高いってわけじゃない。
着ているのは、青色の、花柄の、長そでブラウスと、黒いズボンだ。
女の人は、「まあっ! あなたがツムギちゃんねっ! あたしは千穂の祖母で、画家をやっています。絵本作家でもあるけどね。
アタシはあわあわしながら、「あっ、
にこやかな笑みを浮かべた鈴絵さんが、「飲みものは紅茶でいい?」と聞くので、アタシたちはうなずいた。
鈴絵さんは、「すぐに用意するわね。絵がいっぱいあるから、よかったら見て行ってね」と言って、ほほ笑んでから、パタパタと足音を立て、もどっていく。
玄関と、長いろうかのかべには、たくさんの絵がかざってあった。
桜と菜の花の絵は、アタシが、お父さんとお母さんといっしょに、お花見に行った、あの公園で描いたものだろうか?
青い海と、白い砂浜の絵や、ネコ神社の絵。
それから、紅葉した木々の絵もあった。
ウサギとか、リスとか、鳥とか、シカとか、馬とかの、ふつうの動物たちの絵も、あるんだけど、花と妖精の、ファンタジーな絵もあった。
1枚、1枚、絵をながめながら進んでいたら、広い部屋に着いた。
アタシの家と似た感じだから、リビングダイニングだろう。
食事をしたり、家族でテレビを見る場所だ。
リビングダイニングにも、たくさんの絵があった。
ぬいぐるみもたくさんあったけど、今は絵が見たくて、アタシはゆっくりと、絵をながめた。
鈴絵さんは、お茶のじゅんびをしていたし、アタシは絵が見たかったから。
絵をながめていたら、涙と共に、絵が好きだという感情が、あふれてきた。
すぐに涙をふいたけど、そばにいた千穂とひなちゃんは、アタシが泣いたことに気づいてたと思う。
だけど2人は、なにも言わなかった。
リビングダイニングには、ごうかなイスに座るアイビスの絵があった。
喫茶店にあったものと、イスの色がちがう。
「できましたよー」
やわらかな声がしたので、アタシはパッて、ふり向いた。
鈴絵さんが、キッチンワゴンをおしながら、歩いてくる。
キッチンワゴンの上に、紅茶やお菓子がのっていた。
トウメイなビンには、角砂糖。白い容器に入ってるのは、ミルクだろう。
「これっ、イチゴジャムのクッキー?」
ひなちゃんがたずねると、鈴絵さんが、「そうよ。今朝焼いたの」と言って、ほほ笑んだ。
紅茶やお菓子をテーブルに置くのは、みんなでやった。
なんだか楽しくて、ニコニコしていたら、鈴絵さんが、「ありがとね」と、やさしく笑った。
しあわせだなって、アタシは思った。
鈴絵さんにすすめられて、みんなで、クリーム色のソファーに座る。
千穂とひなちゃんが、持っていたトートバッグを、自分の横に置くのを見て、アタシも、持ってきた空色のショルダーバッグを、自分の横に置いた。
「お砂糖とミルクは、好きなだけ入れてね」
鈴絵さんの言葉に、アタシたちは「はい」と答えた。
そしてアタシは、紅茶に、角砂糖2個と、ミルクを入れて、スプーンでかきまぜてから、コクリと飲んだ。ちょうどいい甘さだ。
そう思っていると、ひなちゃんの声がした。
「ツムギちゃん、クッキーも食べてみてっ! 千穂ちゃんのおばあちゃんのお菓子、おいしいんだよっ! おいしい手作りお菓子を、いっぱい食べたおかげで、ワタシも、おいしいお菓子を作りたいって、思ったんだっ!」
「まあ! ひなちゃんったら」
鈴絵さんはうれしそうな表情で、クスクス笑う。
なんだろ? この、しあわせな空間。
なんかもう、胸がいっぱいなんだけど。
そう思いながらも、アタシはジャム入りクッキーを、口にした。
うわぁ!
「おいしい……」
つぶやいたあと、急にはずかしくなって、うつむいた。
すると、「うれしいわ」という、やわらかい声がした。
ドキドキしながら顔を上げると、やさしい表情の鈴絵さんがいた。
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