5. たまの名前を呼ばれたけれど

「自分の名前って、どう思う?」





斎岡ときおかけるん】はそう口にしました。




「......私の?、それとも斎岡の?」




「もちろん猫路地さん自身のよ」





彼女の名前は【猫路地ねころじくらい】





「正直、なぜ?以外の感想がわかぬ」


「どうして?」


「だってさ、【くらい】だよ?私。そんな名前聞いたことある?」


「へ〜猫路地さんて、くらいって言うんだ〜。」


「ウッソだろ斎岡おまえ


「流石に冗談だよ。猫路地ねころじさんの名前くらい知ってる。くらいだけに。」


「全然上手くねえ」



「名前の由来は何なの?」


「月末の夜中に生まれたから。」


「月末」


つごもりってわかる?大晦日おおみそかの真ん中の字。あれ、月末って意味で【くらい】って読むんだって。それと夜中で暗かったから。」


「しょーもな」


「おう喧嘩売ってんのか?」



「なになに...。つごもり、よくわからない、物事がはっきりしないの意......。ほ〜、これはこれは」



「色々理由付けはあるんだろうけど、絶対語感でつけたよウチの親」


「まあまあ、斎岡ときおかは語感って大切だと思うよ。呼ばれやすさは愛され度だよ。」


「そう言っていただけるとタスカル。で、斎岡の由来は何なの?」



斎岡ときおかはねー。むかしむかし、仏事ぶつじ、仏教の行事をり行う一族でして、かつ住んでたのが岡だったらしいのですよ。」



「名字の由来じゃねーかい」


「だって猫路地さん、斎岡ときおかの由来はって聞いたじゃん?」


「ズルいわ〜。斎岡ズルいわ。ズル岡だわ〜。」


「名前で読んだら教えてあげる」


「......。斎岡の名前ってなんだっけ」


「ウッソだろ猫路地さんおまえ


「さっきの仕返しよ。んで由来は?」



「仏教の行事を」


「名字よ!それ名字なんよ斎岡」


「名前で呼んで?」


「なんでそうかたくなに」


「いいじゃん。斎岡も猫路地ねころじさんのこと名前で呼ぶから。」


「えー。キモチワル」


「ひでえ」



「で由来は?」


「猫路地さんも意外と頑なね。」


「ここまで焦らされたら聞きたいじゃん。」



「斎岡の由来はね、いつまでも元気で長生きできるようにって、長いものの名前を付けたらしいの」


「へー」


「斎岡パパ&ママが、お寺の和尚さんに聞いたものを色々組み合わせたらしい」


「考えられてますね」


「でもこの名前にも駄目なとこがあってね、頭にこぶを作ったときに斎岡パパのところに行って、名前を呼び返されるうちに、こぶが引っ込んでしまったという......。」




「寿限無ぅ!」




「なんでい猫路地さん」


「お前は寿限無じゃねえ!寿限無なんよ由来が!」


「バレたか」


「なぜバレぬと思った」


「ちなみに名字の段階から嘘です」


「そっからかい!?」



「生まれてたら3度めの嘘だから許して」



「あと1回はどこでついたんだよ?」


「そこは斎岡シークレット」



「そうですかい。で、由来は?」


「頑なだねえ、猫路地さん」


「今んとこ何も得られてないからね今日。最高に無駄な時間よ」


「じゃあ話してやろうか、斎岡の名前の由来」


「どうぞよろしく」



斎岡ときおかネームの由来はね、積石つみいしからきてるらしいの。誰かと一緒にゆ〜っくり、少しずつ成長していきなさいって意味」



「真面目やん」


「せやろ」


「それで、けるんって言うんだ」


「あ、言いましたねついに、猫路地さん。けるんって呼んでくれましたね。」


「言葉の綾だよ」


「くらい」


「なにさ」


「......ふふふ」


「キモ」


「くらいさんヒデェ〜」


「けるんキモ〜」




「......で、猫路地さんよ」


「あ、戻るのね。」


「そのままが良かった?」


「いや、お好きになさって」


「じゃあ斎岡は、猫路地さんを猫路地さんと呼びたい」


「さっきはあんなに名前に固執してたのに」



「名前はいつでも呼べるけど、名字は一生呼ばないかもしれないじゃん?」



「あ〜、まあ、ね。でも今は元のままで良かったりするんじゃないっけ?」


「それでも斎岡は今、そうしたいからいいの」


「そうかい」



「でもたまには名前もイイねって思うので、今日は帰るまで くらい って呼びます」



「どっちやねん」


「くらい って呼ばれるの好きじゃないの?」


「好きじゃないかも」


「なんでえ」


「最初に言ったじゃん。語感ありきだからって」


「じゃあ、斎岡が くらい って呼ぶのは好き?」


「うーん...。ふつう」


「ふつうかあ」


「中和しあって中間かな、まあ一応、毎日遅くまで喋る仲だし、大切な友達だしね。」


「へー......、へー!斎岡嬉しくなっちゃうよ!大切な友達だなんて恥ずかしいなあチクショウめ!」


「何だそのテンション」


「しょうがないから、今日は早めに切り上げて、買い食いでもしましょうぜ!アイス食おうアイス!いこう猫路地さん!」


「あ?まあいいけど、急だなあ」


「レッツゴートゥーヘル!」


「地獄にはいかんぜよ、斎岡や」






こうして今日も、斎岡と猫路地さんの放課後じんせいは過ぎていった。












5わ おしまい

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