第24話 エピローグ≪終≫

雪華と湊は、声の主を探す。

「若菜さん?」

「帰ってきてくれたのかな・・・?」


二人はカフェの中を覗いた。


そこには、確かに誰もいない。


「二人とも、本当に待っていてくれたの?」

二人はその声に振り向いた。


「若菜さん!」

雪華は目を輝かせる。

若菜は、にっこりと笑っていた。


「でも、驚いた・・・。また会えてうれしいです。」

湊は笑って言った。


「あの後・・・、森で色々考えていたんです。本当に戻っていいのかな、って悩んでいたけど、はじめくんがこの町を気に入ってて、できればずっといたいって背を押してくれてね。」

若菜は嬉しそうに言った。


「しばらくは、ここの町で頑張ろうって思うの。せっかくいいご縁にもたくさん恵まれたし。」

「嬉しいです。いっぱい遊びに来ますね!」

雪華は嬉しそうに言った。


その後、雪華や湊は休みになるとCafé aux fleurs de cerisierへと遊びに来ていた。


若菜はそのたび、お客が増えて忙しかろうと嬉しそうに応対してくれるのであった。

雪華と湊は、いつもお気に入りの窓側の席に通される。

「今日は、人気のストロベリーパイですよ~!」

若菜の嬉しそうな声が、店内に響いた。


***

若菜は森に帰った時。


雪華から贈られたものがあった。

若菜の長い髪に合いそうだ、と雪華が見立ててくれた細いスカーフである。

森の中で、若菜はそのスカーフを髪に付けて過ごしていた。


「精霊様、その御髪のかわいい!」

「ありがとう。町にいた時、友達になってくれた女の子からもらったのよ。」

「来年もそこへ戻られるのですか?」

他の妖精が尋ねる。

「ええ。そのつもりよ。友達が戻ってきてほしい、って言ってくれたから。」

「一緒に行きたいです。」

その言葉に、若菜は嬉しそうに微笑む。


「ええ、ぜひいらっしゃいな。ただ、お店のお手伝いをしてほしいな。」

「わかりました!はじめたちのような姿ではいけませんよね・・・。」

「ええ、もう少し成人した姿でお願いね。」


若菜は同行を申し出た妖精に、人になる為の術を教え、名を与えた。

さらに、飲料の淹れ方やラテアートの描き方を指導した。


「ええ、上手よ。そのままそっと楊枝を・・・、うん。完成よ。」

「ありがとうございます、精霊様!」

「町にいる間は、若菜って呼ぶのよ。」

「はい!」


***


ーーねえ、知ってる?


ーーー何が?


ーー冬の間だけ閉まってたカフェ、営業再開したんだって。


ーーーそうだったの?


ーー行かない?


ーーーうん、行こうよ。


ーー楽しみだね、精霊様の仕事姿。


噂をしていた女子高生たちの姿が発光する。


Café aux fleurs de cerisierへと


その光は向かった


<<完>>


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