第12話 【回想】夢のために
子どもたちは、レシピの内容を知るようになって、こぞって料理を作るようになった。
瑞紀の念願であるカフェがオープンできれば、手伝うことができるだろうと考えた末での行動でもある。
瑞紀が日雇いで家を空ける日は、交互に料理当番を担当して腕を磨こうと必死だ。
「わー!まってまきと!それおしおだよ!!」
「あ・・・。まちがえちゃった・・・。」
「おさとうたそうよ!」
「こんどはこげたー!」
「・・・これ、たべられないよね?」
「うん・・・。まっくろけ。」
もちろん、料理などしたことがないのだから、いつも必ずどこかで失敗をする。
そんな中でも、めげずに毎日交代で料理をするようになり数日。
はじめは初めて自分で作った料理が上手くできた。
メニューはフレンチトーストだ。
「みずきー、これどう?」
「うん・・・、美味しいけど、そうだね・・・。もうちょっとお砂糖足しても良いかな。もしくは、トッピングに生クリームとか添えちゃうと良いかも。」
「ほんとに?おいしい?」
「うん。美味しいよ。よく頑張りました!」
「みずきがおいしい!っていってくれたよ!」
「よく頑張ったね。みんなもいつも頑張ってくれて嬉しいよ。ありがとう。」
瑞紀が笑顔で言うと、子どもたちも大喜びする。
翌日、瑞紀は仕事に出かける。
今日も、舞台の裏方の仕事だ。
「あ!瑞紀さん。久しぶりだね。」
「浩紀くん、久しぶりだね。元気にしてる?」
「ええ、おかげさまで。今日も頑張ろうね!」
「はい。よろしくお願いします。」
「そういえば、今度舞台でちょい役だけど、役をもらったんだ。見に来てほしいな。」
「うーん、行けたら、と思っているけど・・・。」
「大丈夫、小さい劇団だからさ。あとでチケット渡すよ。」
「ありがとう。じゃあ、その日は空けておくわ。」
「うん。僕も頑張るよ。」
瑞紀は仕事中、ただひたすら縫物をした。
衣装の裾を直し、袖を調整し、とにかく服が多いので衣装に割り振られた人たちは必死だった。
「舞台の衣装って、華やかで可愛いなぁ。」
「本当にね。」
隣で縫物をする女性たちが笑って答えた。
「こんなにかわいい衣装をまとって踊ったり、歌ったり。素敵だけど、それもすごく努力が必要なのよね・・・。」
「舞台に立てるなんてどれだけ倍率が高いんだろうね・・・。」
瑞紀はその言葉に、浩紀がどれだけ努力しているかを思い知る。
目標のために、日夜必死に頑張っているんだと改めて感じた。
「よし、あと一着!」
「頑張ろうね!」
瑞紀は頷いて、頼まれたところを丁寧に縫った。
仕事終わり、瑞紀は本屋に立ち寄った。
そして、改めて自分もできることを少しでも成長させようと焼き菓子のレシピを購入した。
「たまには、お菓子も作りたいな。」
「あれ?瑞紀さん。どうしたの?」
「ああ、浩紀くん。久しぶりに欲しい本を買っていたの。焼き菓子のレシピとか。色々アレンジの参考にならないかな?って思って。」
「それはすごいな!もしできたら教えてよ。食べてみたい!」
「ええ、じゃあ今度持って行くわね。約束よ。」
「うん。楽しみだよ」
瑞紀と浩紀はそこで別れた。
「帰ったら、少し焼き菓子を作ってみないとね。」
瑞紀は楽しそうに帰り着く。
「みずき、おかえりー!」
子どもたちは嬉しそうに出来上がった料理を自慢げに並べていた。
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