第11話 【回想】みんなのだんけつ
「みずき!こげてる!」
「こげくさーい!」
「えっ?ああっ!ごめんね!すぐ作り直すから!」
夕食を作り直し、子ども達に食べさせる。
「びっくりした!」
「みずきがぼーっとしちゃうなんてめずらしいね」
「なやみごと?」
「ううん、大丈夫。みんな、ごめんね。」
瑞紀は子どもたちには心配させまいと笑顔を心掛けた。
「みずきはわかりやすいもんな!」
「ちょっと!はじめくん、そんなことないから。働くってのはそういうことじゃないの?」
「それはおれもわからないけどな。」
「はたらいたことないもんねー?」
子どもたちははじめをからかうように言った。
「そうそう、はたらいたことないもんね!」
「威張って言うことではないと思うわよ?でも、働いて、収入があれば、もうちょっとはみんなのやってみたいこととかできるようになるからね。」
「そうなの?」
「みずき、はたらきたい!」
瑞紀は戸惑った。
まさか、子どもたちまで働きたいと言い出すとは思わなかったからだ。
「少し、考えてみるわね・・・。」
瑞紀は色々合間を縫っては調べてみた。
だが、やはり子どもで働ける道などあるわけもなく・・・。
代わりに、住まいの掃除などを手伝ってもらうことにした。
「こういうのも一応はお仕事になるから、みんなで分担してやろうね。はじめくん、みんなのリーダーとしてよろしくね。」
「あ、おれなんだ?」
「うん。見た感じでもはじめくんが一番お兄さんに見えるからね。」
「なあみずき」
「ん?何かな?」
「一番上はあいつ、まきとだよ。」
はーい、とまきとは手を挙げた。
「え?そうだったの?」
「いいよ、ぼくよりはじめのほうがうまくまとめられるから。」
「みかけではんだんしちゃいけないぜ!」
「うう・・・、子どもたちの方からお説教されるとは思わなかったわ・・・。」
瑞紀は頭を抱えた。
その日を境に、瑞紀が仕事に行っている間に子どもたちは役割分担をして、料理と掃除を行うようになった。
ただ、料理に関してはレシピが読めない。
「えーっと、これどうやるんだっけ?」
「わかんないよ!」
「もうまほーでやっちゃお!」
「そうだそうだ、そうしよう!」
「そうじはちゃんとやるんだぞ!」
はじめはしっかりと注意した。
「ただいま!うわぁ!キレイになってるね。ありがとう!みんな凄いよ!」
「えへへ!」
瑞紀の笑顔に、掃除を担当した子どもたちは喜ぶ。
「そうだみずき!おねがいしたいことがあるんだ!」
「どうしたの?」
「これ、りょうりのつくりかたのよみかたをおしえてほしいんだ。」
「分かったわ。教えてあげるし、私たちの言葉にしてしまいましょう。」
瑞紀は、はじめに読み方を教えていく。
その横で、まきとはノートに彼らの言葉として綴っていく。
カフェを開店しようとしても、準備や調度品の調達で、なかなか思わぬように進まない準備だったが、瑞紀は諦めることはしなかった。
子どもたちは、瑞紀の手料理を何より喜んでくれるのだから。
「いろんなひとに、みずきのおりょうりをたべてもらいたいな」
と子どもたちは目を輝かせて言った。
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