第10話 【回想】目標とは・・・

瑞紀は、木の根元を見つめた。

「さてと、どんなお店にしようかしら・・・。」

はじめは瑞紀の近くに寄っていく。

「みずき、かみにかいてみたら?」

「そうだ、そうしてみた方が良かった!ありがとう、はじめくん。」


瑞紀は紙に設計図を描いた。

「意外と難しいもんだよね・・・。」

「そうだよなー。なあ、このはいちにしてみるのはどうだ?」

「うーん、そうだね。それに、これも欲しいし、あれも・・・」

「そんなにおけるか?」

「何とかするしかないね。」


二人はそれからずっと話し合い続けていた。

「みずきー!おなかすいた!」

「のどかわいた!」

「えっ?もうこんな時間なの!?」

「つづきはあしたにするか。」

「そうだね。さあ、すぐご飯にしましょう。」


瑞紀はある物で工夫をし、何とか食事を用意する。

「買い物も行かないといけないなぁ・・・。」

「にんげんのつかう「お金」ってやつあるの?」

「うん、少しはね・・・。ずっと前、ちょっとの間だけ、カフェってところでバイトっていうのは経験したことあるから、それのおかげでね。」

「ふーん、そんなことしてたんだ・・・。」

「そうしないと、生きていけなかったんだもん。」


瑞紀はそう言って困った顔をした。

「しばらくは、働きに出ようかしら・・・。まず生活がね・・・。」

「ここのおみずは、なんだかあんまりおいしくない!」

「がまんしてくれよ・・・。」

「美味しいお水の方が勿論いいから、売っているお水になっちゃうわね・・・。」

瑞紀はさらに頭を抱えた。


「そもそも、おれたちでさえはたらくじだいなのか・・・。」

「見た目が子供じゃ、どこも雇ってくれないのよ。私もそこは結構苦労したんだから。」

「そうだったんだ・・・。こんなふわんふわんなみずきでも・・・。」

「ちょっと!それどういう意味!」

瑞紀はむすっと頬を膨らませる。


翌日から、瑞紀は子どもたちを養うべく日雇いで仕事を始めた。

今日は舞台の裏方作業である。

「瑞紀ちゃんって言うんだね。仲良くしてほしいな。あ、僕は宮川 浩紀(みやがわ ひろき)だよ。俳優を目指しているんだ。よろしく。」

「よろしくね、浩紀くん。」


瑞紀は仕事で知り合った浩紀と親しくなった。

彼は夢を追う青年であった。


「俳優って言うことは、演技とかしてるの?」

「そうだね。僕は舞台をメインにしているんだけど。」

「すごいなぁ!」

「今日は裏方しかしてないんだけどね。でも、ここからいろんな人の演技を見る、それがいい勉強になるから嬉しいんだ!」

浩紀の眼はキラキラと輝いていた。

「瑞紀ちゃんは?」

「えっ?」

「瑞紀ちゃんの目標、聞いてみたいな。」

「私は・・・、カフェを経営して見たくて。」

「そうなんだ?でも、カフェとかって色々大変だと思う。応援しているよ。」

「ありがとう!」

瑞紀は笑って答えた。


収入を得て、買い物をして帰る。

「みずきー、おかえりなさい!」

「ただいま。みんな、遅くなってごめんね!」

瑞紀は夕食を作りながら、目標はなんだろう、と改めて考えるのであった。

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