第13話 【回想】個性
子ども達が作った料理は、やはり個性的であった。
「どう?おいしい?」
「みんな、毎日頑張ってるからね。昨日よりも美味しくなってるよ。」
「ほんとうに!?うれしい!」
「でも、まきとはねー、きょうもしっぱいしちゃったんだよ。」
「・・・みずき、まっくろけにしてごめんなさい。」
「いいよいいよ、そうやってね、失敗して学んでいくの。料理も裁縫もなんでもね。」
「そうなの?」
落ち込んでいたまきとは、その言葉にパッと顔を明るくした。
「うん。だから、いつかはまきとくんも美味しい料理が作れるようになるよ。きっと。」
その言葉に、まきとは率先して料理に挑むようになる・・・が。
「うわっ!しょっぱい・・・。」
「おだしいれすぎだよ。」
はじめは困り顔で言った。
「そういうときはどうすればいいの?」
「えっとね、みずきがこのまえそういうときは、みりんとかおさけでちょうせつするとかっていってたかな?」
「な、なるほど・・・。」
「おさけって、どのおさけ?」
女の子が話しかける。
「えっとねー、そのみどりいろの・・・、そう、それ!」
「これをすこしいれれば、ちょっとおいしくなるのかな?」
「ためしてみようよ!」
まきとは、思い切って料理酒を野菜炒めにいれた。
「こんどはりょうりしゅいれすぎ!」
「ううん、ちょうせつがむずかしいよー!」
「ただいまー、って、どうしたの!?」
「みずきー、りょうりのちょうみりょうのちょうせつがわかんなくなっちゃった!」
「ああ・・・、なるほど・・・。でも、頑張って作ろうとするのは偉いよ!凄い!調節の仕方、教えるから一緒に勉強しようね。」
「はーい!」
まきとの笑顔に、はじめと女の子はホッとした。
夕食を終えて片付けをしてから、瑞紀は焼き菓子づくりを始めた。
「久しぶりだからなぁ・・・。そうだ、まずはクッキーを作ってみよう。焼き加減は気を付けないと・・・。」
生地を練り、伸ばし、冷やし固める。
「みずきー、なにやってるの?」
「久しぶりに焼き菓子を作ってみようと思って。カフェをするなら、やっぱり焼き菓子は主力になるでしょう?」
「そっか!じゃあ、おれもてつだう!」
「ぼくもー!」
「わたしも!」
子ども達もわらわらと寄ってくる。
「じゃあ、冷やした生地の型抜きしてくれるかな?」
「はーい!」
子ども達は喜んで返事をした。
「端っこの方から抜いていってね。その方が上手くできると思うから。」
ハートに星に、桜や梅、各々好きな型抜きで生地を抜いていく。
「いろんな形で面白いね。」
「それ、つぎかしてー!」
「えー?もういっこぬきたい!」
「ケンカはだめよ。みんなで仲良く作ろうよ。」
取り合いをしようとする子どもをスッとけん制する。
「ぼろぼろになっちゃった・・・。」
「あ・・・、でも大丈夫だよ。ほら、個性が出て良いじゃない!」
「でも、みんなみたいにじょうずになりたい!」
「まきとくんにはまきとくんに良いところがある。それに、誰だってうまくできる物、苦手なもの、いっぱいあるんだよ。それはそれで良いじゃない。」
まきとの落ち込む様に、瑞紀は優しく声をかけた。
「うん、ありがとう、みずき!」
キッチンペーパーに並べたクッキーを焼き上げる。
部屋の中は、ほんのりとバニラの香りが漂った。
「ほら、みんなで頑張ったクッキーが焼けたよ。明日のおやつにしましょうか。」
「はーい!」
子どもたちはみんな笑顔で返事をした。
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