第6話 新たな常連
約束通り、雪華は湊を連れてカフェ フルール・ドゥ・スリズィエを訪れようとした。
「姉貴―、さっきもここ通らなかったか?地図アプリ使えよ。」
「それがね、そのカフェってなぜか地図アプリが使えないのよ。」
「え?なんで?使えるだろ?ほら!」
「・・・エラーになってるよ?」
「うわっ!ほんとだ・・・。なんだこれ!」
湊はその画面に戸惑う。
「いつもこの辺りで・・・、あ!あそこの森だ!」
すたすたと雪華は歩いていく。
「いつからここは森になったんだ?そもそも、そんなところに・・・あ!待ってよ姉貴!」
湊は慌てて雪華の後を追う。
「あ!雪華ちゃん。今日も来てくれたんだね、ありがとう。いつもみたいに中に入っていて。」
「はーい。」
若菜は、湊の顔を見た。
「あなたは?」
「姉貴・・・、えっと、雪華の弟です。湊って言います。」
「湊くんね、よろしく。私は若菜って言います。ここのカフェで働いてるのよ。」
「若菜さんって、姉貴が良い人だって言うけど本当に美人さんなんですね。」
「うふふ、もう!お上手ね。」
若菜は照れ笑いした。
「湊、こっちだよ。」
「あーはいはい!」
湊は雪華に付いていく。
「中もこじんまりとしてるんだな。」
「そうなのよ。でも、おしゃれなカフェでしょ?」
「うん。そうだ、ちょっと地図アプリを・・・。」
「・・・エラーになってるよ?」
「うん・・・。電波は普通なのに。おかしいな?スマホが壊れてるのか?」
「さあ・・・?私も最初来た時そう思ったんだけどね。」
「今日のおススメは焼き立てのマフィンだけど、飲み物どうする?」
「私は若菜さんのおススメにします!湊はどうする?」
「あ、俺もそれで。」
「はーい、ちょっと待ってね。」
若菜はブルーベリーマフィンと二人分にオリジナルブレンドコーヒーを淹れる。
湊はスマートフォン片手に、不思議そうな顔をした。
「姉貴、今試しでライン送ったけど、見れる?」
「え?・・・うん、見れるよ。あ、ゆるキャラのスタンプ送ったでしょ?」
「うん。使えないのは地図アプリだけなのか・・・。」
「不思議だよね。でも、町の中を歩いてるとそのまま直るよ。」
「そうなの?・・・ますます不思議だね。」
若菜は二人にマフィンとコーヒーを差し出した。
「今日はブルーベリーを練りこんでいるのよ。」
「わぁあ!美味しそう!いただきます。」
雪華は嬉しそうにマフィンを頬張る。
「姉貴、昔っからマフィン大好物だもんな。いただきます。」
湊もマフィンを頬張る。
「ん!うまっ!すっごい美味しい!」
「良かった。」
コーヒーはあっさりと、少し爽やかな風味だった。
湊はすっかり、コーヒーもマフィンも気に入ったようだ。
「若菜さん、俺もまた遊びに来ていい?」
「ええ。いつでも来てね。」
若菜は嬉しそうに笑った。
「姉貴―、また連れてきてくれよ。」
「考えとくね。でも、気に入ってくれたならよかった。」
雪華も湊がすっかり気に入ったのを安心した。
「唯一、地図アプリが機能しないのは困るけどな。」
さらっと言う湊に、若菜は困ったように苦笑いした。
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