第3話 迷子の雪華

雪華は数日後、再び店を訪れようとした。

「あれ?確か、この辺りだったような気がするんだけども・・・。」

またも、町の中なのに道に迷ってしまった。

「若菜さんの作ったマフィン、また食べたかったなぁ・・・。」


その時、ふんわりとまたあの良い香りがした。

「あ!たぶんこっちだ!」

喜んで、雪華はその方向へと進んだ。


が・・・。

「あれ?違う・・・。この前はどうして辿りつけたんだろう?」

地図アプリが機能しないという不思議なことも、この前経験済みなので地図アプリは頼ることができない。


「わかなのまーふぃんはーおいしーなー♪」

なぜか、唐突に声がした。

雪華はびっくりしてキョロキョロと周りを見渡した。


足元に、小さな子どもがいた。

だが、どこか普通の子どもではない。


思い切って、雪華はその子供に話しかけてみた。

「ねえ、キミ今わかなって、マフィンって言わなかった?」

「ヤバイッ!人間だ!」

「え!?ちょ、ちょっと待ってよ!」

雪華はその子どもを追いかけて走り回った。


気が付くと、あの森のすぐ傍にいた。

「あの子はどこに・・・?」

「あ!雪華ちゃんじゃない!久しぶりだね。」

「若菜さん!こんにちは。」

「今日はね、違う風味のマフィンも焼いてあるの。食べていく?」

「はい!もちろんです!」

雪華は二つ返事でカフェに入った。


「今日はね、チョコチップマフィンなのよ。」

「わぁ!私、チョコチップマフィン大好き!」

「そう?良かった。」

「あ、そうだ。一つ聞こうと思ったんです。」

「なあに?」

「ここのお店の名前って・・・、なんて読むんですか?」

「ここの名前?これは、『カフェ フルール・ドゥ・スリズィエ』と読むのよ。」

「ど・・・、どこの言葉ですか!?イギリスじゃないですよね?」

「これは、フランス語よ。意味は・・・、フフ、自分で調べてみてね。」

若菜は笑って答えた。


今日のコーヒーは、ほんのりと苦みが強くさわやかな風味がした。

「いつも思いますけど、コーヒーもいつもフレーバーが違うんですね。」

「好きなものを言ってくれれば、それで出すけど・・・、お菓子に合うものを選んでいるのよ。」

「そうだったんですね!若菜さん凄い!」

「ありがとう。」


そして、雪華は思い切って言ってみた。

「実は、ここに来ようと思っても道に迷ってこられなくて。」

「ここはね、どういうわけか、なぜか見つけられないっていう人が多くいるわ。」

「不思議ですよね。」

「うん。でも、雪華ちゃんはまた来てくれた。だから、またいつでも来てくれる、そんな気がするわ。」

「実は、道に迷ったときに不思議な子がいて。その後を追いかけてきたら辿りつけたんですよ。」

「まあ、そうだったの。でも、雪華ちゃんにもまた来て欲しかったから、私はとても嬉しいわ。」

若菜は嬉しそうに笑った。


その夜、若菜はまた子どもたちが集まってくるのを見つけた。

「今日はありがとうね。」

「何だったんだよ、あの人間!」

「ふふ、あの子は私のお友達よ。オイタはしないでね。」

「ふーん。」

子どもは不満そうだったが、頷いた。

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