第2話 あなたと私

 連続殺人を犯した俺にはもったいないほどの高待遇で看護されていると、段々と自分が犯したつみの重さというのを計りかねてしまう。また、看護師が若くて俺の好みだから目のやり場に困るし、こんな美人に毎日看護されていると俺の本能が叫び始めるのだ「早くもう一押ししろ!手遅れになっても知らんぞ!」と。この衝動を宥めるにはかなりの努力が必要になるが、俺にはもはやこの衝動を宥める理由などないのだ。なぜなら俺は何十人もの人を殺して回復した後は死刑になることが確定しているのだから。

 ナイチンゲールが言っていた「あなたには生きる義務と権利があります」という言葉は何を意味しているのだろうか。彼女の笑顔から不意に放たれたいつかの言葉を俺はずっと考えていた。考えても答えは出ないからひたすら彼女を鑑賞して体の痛みに耐える毎日だ。

 「お粥ができましたよ、はい、あーん」透き通るような声が俺の口を自然に開かせる。こいつのいうことには逆らえる気がしない。一口目を噛んで飲み込み終わったのを見ると、また「はい、あーん」と言って休みなく口に食事が運ばれ続けた。

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