いつだってこどものまま

田土マア

いつだってこどものまま


「四名でお待ちの小出こいでさま、お待たせしました。 ご案内致します。」

 ウェイティングボードに並んだ大人二人、子ども二人。どう見ても子どもという歳ではない見た目の男性一人と女性一人、加えて第二の人生を歩み始めたであろう高齢者二人を案内する。

「こちらのお席ご利用ください。 ご注文お決まりになりましたらそちらのボタンでお呼びください。 失礼致します。」

 毎週土曜日の夕方頃に決まって小出さま家族は来店される。

 その度いつも大人の欄には二人、子どもの欄に二人と記入する。

 子どもと言ったら中学生くらいまでの歳ではないのか。と思ってしまうが、何故か小出さま家族は毎回同じようにウェイティングボードに記入する。

 規模的にはさほど大きくないファミリーレストランだから、よく来るお客さんの顔は覚えてしまう。


 そして小出さま家族は大抵メニューが決まっている。

「おろしハンバーグのニンニク抜きを一つ、チーズドリアを二つ、和食定食を一つ、あと…」

 あとの後にはその時飲みたいドリンクが来る。お茶やサイダーなど気まぐれだった。


 ただのウェイターだったが、なぜいつも小出さまが子どもの欄に記入するのか気になっていた。お客様の個人的な内容に踏み込んではいけないことになってはいるが、どうしても気になってしまった。


 ある時、小出さま家族が大人二人とだけ記入していた。料理を提供した際につい、口から出てしまっていた。

「あ、あの… 小出さま、いつも当店をご利用頂きありがとうございます。 大変恐縮なのですが、小出さまはなぜ子どもの欄にご記入なさるのですか?」



 小出さまから出てきた言葉は──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつだってこどものまま 田土マア @TadutiMaa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説