らふか

みずいろの薔薇を簪にして

宝石にしてしまえばよかった


アクリル絵の具の

力強さを水で溶かしてしまいたかった


屋根のきしむ音よりも

激しい稲妻が空に走っているのをみた


遠くだ

遠くの空

その下に人がいることをわすれてしまうような





人間が耕して温めた玉葱を

躊躇ナク切り刻んでカレーの具材にしてしまうこと

肉は牛であった事を

どれくらいおぼえている

おいしいのうらがわに

血と骨がまぎれこんでいる


透明な泥水をのんでいるみたいだ

蛇口の水はいつのまにか綺麗で

とても綺麗だ

君のつくられた肌色絵の具のように

僕の言葉もまた

作られた都市のような悩みでベタベタだ



(いきるとかしぬとか)




ああ、じゃまだ

こんなにもおいしいのに

シチューはこんなにもおいしいのに

君の作ってくれたシチューは


それはまるで

昨日の夜寝ようとした時にふってきた

小雨のように





少しだけ空気に溜まった

湿度を追い払わないと

八つ裂きにしないと眠れないように

繊細な心の方角は

いつも狂っている

大事な事

いつも眼を背けて寝ているふりして

寝付けない夜から

いつも背を向けて

雨の音を感じる事で

自分のまぶたを下ろして幕を閉じた





世界に、

ちっぽけな世界に

リトル・グッバイ





遠くにいる人はみな


稲妻の音にまけてしまう


その存在感の下で

シチューを食べるよ


真っ赤なシチューを

とても、とてもおいしい

きれいなしちゅーを

口いっぱいにはらんで


それはまるで

宝石みたいな味がしたんだ



――ほんとだよ?

  夢の中では、



宝石みたいな味がしたんだ



ああ、

水色の薔薇を簪にして

宝石にしてしまえばよかった



/



屋根がきしむようなリズムで

隣で誰かがセックスしている

僕はその音を聞きながら


音楽を聴いている

ご飯を食べている


すぐ側で

ほんのすぐそば

すぐそばのかべだ


そこが

人が動物であることを思い出す暗闇であるとしたら


新しく生まれたあかちゃんに

水色の簪を

さしてあげたい



君はこうして生まれたんだよって

宣告する



雷鳴に誓って

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