第4話 朝は二度寝
「ん~ おいしっ♡」
「……」
「お目覚めですか? おにいさん♡」
俺は毎朝床に敷いている布団から目覚める。狭いマイルームに布団を敷けば残っているスペースなどせいぜい机が一つ置けるか置けないか、その程度のモノだった。
人を招ける部屋では到底ない。
「台所にあったパンケーキミックスで作ったんですけど、食べます? おいしいですよ?」
その限りあるスペースを最大限に利用し、なんなら俺の敷布団を端に追いやるようにして、そこそこちゃんとした机が設置されていた。
カフェとかにあるような一人用の丸テーブルとイス。そしてそこに座る若い女とパンケーキ。
どう見ても男の一人暮らしの部屋には不釣り合いな光景だった。
……甘い香りはこのパンケーキだったわけか。
思いながら、徐々に冴えていく脳で経緯を追っていく。
「はむっ」
女はパンケーキを口にほおばって悶えるような嬉々とした顔をしてみせた。
随分パンケーキが美味しいのだろう。俺が買った特注パンケーキミックスだけどな!!!!
「なんだろう、このパンケーキ、どこかコーヒー牛乳みたいな味が……」
それもそうだ。このパンケーキミックスは俺がセメンダインコーヒーミルクを飲みまくることで集めた応募シール500枚で交換できる特製「セメンダインコーヒーミルクパンケーキミックス」なのだから。
俺は首をかしげる女をただ見つめながらまだ半分寝ている思考を叩き起こそうとした。
……だめだ。まだ眠い。
壁にかけている時計を見ると、時刻は6時30分を示していた。
俺の出勤は8時に家を出れば間に合う。
まだ、寝れる。
この状況には全くもって理解が及ばないが、正直そんなことよりも眠いのだ。
睡眠は取れる時にとっておくべきだ……
「……おやすみ」
俺は見ず知らずの女に向かって宣言した。家にいること自体おかしいのだから、今更パンケーキを勝手に作って食べていたところでそこまで驚きはない。
というか、まだ夢だと信じている俺からすれば、夢の中で眠れば今度こそ正しい現実世界に戻れるのではないかと淡い期待もあったりした。
でも、目をつぶっていてもはっきりと女の声は聞こえてくる。
俺は嫌でも現実と向き合う必要があるのかもしれない……
そう思いながら貴重な二度寝タイムに入ったのだった。
「おにいさんったら、また寝ちゃうんですかあ? こんなにかわいい女子高生がパンケーキで優雅な朝ごはん作ってあげてるっていうのに。」
……
「寝てるおにいさんにいたずらしたって良いですよね?
だって、おにいさんは―――――――」
「社畜を救う女の子は何人居てもいいでしょ?」 そこらへんの社会人 @cider_mituo
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