第5話 きょうを退くひと
おい、おまえのひみつをしってるぞ。おまえわるいやつだな、おれとおなじだ。
ぼくはおなじだといわれていやなきもちになった。おじさんはおさけくさかったからだ。
どけどけ!おれはいまきげんがわるいんだ。
ぼくはおじさんのひみつをしってるよ。
おい、おまえそれだけはだめだ。
たのむからわるいやつにはなるな
きょうのおじさんはいつもよりめちゃくちゃだった。
おじさんはぼくにまねをするなといった。
このまえはまねをしろといったのに。おれみたいになれといったのに。
おれみたいになるな、おれみたいになるなって、じゅもんみたいにいいながらおじさんはふらふらとあるいていった。
やれと言ったりやるなと言ったり
言葉は難しい
やりすぎ、やり直し、やりくりしたり
やらかしそう
やって後悔した方がいいなんて勇気がない
やらないで後悔してもいいとも思わない
やろう、このやろう。やわくない。やめろよ
今日のところは引き下がるライバル
敵役、覚えてろよ!捨て台詞、負け惜しみ
憎めない敵。お約束。やられ役。ヤラレタ
どこの世界にもどの時代でも必要なもの
正義と悪なんかじゃくくれない。主人公の相手。
こどもが冒険していることが多いからなのか、ひらがなのお話を読むと子どもの頃迷子になった裏路地を思い出す。ただの密集した飲み屋の昼の姿、細い道のさきに高そうなお店で行き止まりだったり。香水の匂いがして横から着物のおばさんが出てきて
「あら迷子?」
心臓が止まるかと思った。
きょうを読むひと 新吉 @bottiti
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