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それで、この手の仕事のお決まりとして、抜けると決めたら一番でなきゃならない。バブルの終わりってのは一抜けだけが稼げるようにできてるもんだ。ノロマは残りカスを絞って啜る羽目に陥る。俺らは急いでチベット族でも最下層の農奴のガキどもを集めた。男は大半が臓器だ。女は娼婦として売り払う。女のガキはパキスタンを経由してサウジアラビアから各地に送られる。臓器は現地まで抜き屋がやってくる。清潔なパックに内蔵が詰められて、冷凍されてキャリーバッグに収納され、大事に持ち運ばれていく。生前よりもよっぽど扱いが良いんだ。土地を持たない農民は、子供を売った代金を俺達から受け取って消える。自分で売ったんだ、通報する奴はいない。そして内蔵を抜かれたガキの死体は、葬儀屋が持っていく。
その日の死体は十五だ。普段は一体ぐらいだ。十五倍だな。ガキの小さい体でも、十五も折り重なるとちょっとした山だぜ。で、五つずつを三人の葬儀屋に任せた。三人とも鳥葬を専門としている連中だ。
ああ、そうだ。鳥に喰わせるのさ。おい、そんな目で見るな。確かに証拠隠滅の面もある。まあ、その面がほとんどさ。ただ、他の連中は、葬式ぐらいでもしてやるだけ、気が紛れたんだろうよ。俺はまあ、そんなに気にしてなかった。大抵はな。ただ、流石に俺もそのときに少しヘンな気分になった。感傷的になったというんだろうかな。一日に十五人もガキがバラされるとこを目の当たりにしたんで、少しおかしくなっていたんだろう。それまで一度も見たことがない、死体の始末が、そのやり方が気になった。いや、まあ鳥に喰わせるのは知ってた。どこの誰のかも知れない葬式を遠くから見かけたこともあった。観光業の一環で、エンターテインメント化した仰々しい鳥葬を披露している連中もいる。ただ、自分が関わった仕事の始末は見たことがなかったんだよな。それでなんとなく、葬儀屋の一人についていった。
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