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おんなじような話がヒマラヤのエベレストにもある。山頂付近には持ち帰られることのない凍死体がずっと転がっていて、それが道しるべになってるんだ。名前もある。グリーンブーツってな。本名もわかっているんだが、それでもそいつはグリーンブーツって呼ばれている。
サハラ砂漠のど真ん中でもよ、元アメリカ大統領の死体が、キャラバンの道しるべになってるんだ。それが誰だったかとか無関係にな。
自分が誰だとか、どんな奴だとか、そういう認識と役割は無関係なんだよな。役割ってのは自分じゃねえんだよ。役割を負うって表現があるが、実に的確だ。
導き手、スター、社長、係長、新人、夫、妻、息子、ペット、彼氏、能無し。全部役割の名でもある。
しかも、本人が死のうが、役割は当人じゃねえから、いつまでも続くことがある。その上、どう変遷していくのか、本人にお構い無しだぜ。やめようにもやめられない。
そんでまあ、その後に、って、んん?
あのよぉ、ここは風が強いからよ、もう少し腹に力を入れて話してくれ。
ああ。
ああ、そうだよ。俺ぁカタギじゃねえよ。見た目はカタギっぽいだろ? カタギのふりしてんのさ。組に登録もしてねえがな。登録すると暴対法の所為で色々と不便になるからな。広域指定暴力団の構成員はホテルにも泊まれねえんだ、コレが。海外で仕事するなんて夢のまた夢さ。だから俺みたいに世界を股に掛けるキャリア組は盃も貰ってねえ。例外なくみなそうだぜ。
日本は外交官が優秀でよ、百九十カ国はパスポートのみで入国できる。パスポートさえ取れりゃいいのさ。普通のヤクザはそれが無理なんだけどな。
話を戻すか。
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