第5話 盲導犬チャーリーの夢

何だ、夢かワン?


今日もまた変わらぬ毎日が始まる。

僕の毎日は、盲目のご主人様を、毎日安全に誘導して、お守りすること。

そんな毎日に嫌気がさす。それが近頃見るこのような夢。僕は普通の犬。いや、こんな夢見るなんて、普通じゃない。ただいつもと同じことをすることに、ちょっと飽きた。たまには、冒険をしたい。僕はもうすぐ十歳になる。盲導犬定年の年である。どんな余生が待っているのだろうか。できることなら、他の犬にはできないような、スケールのでかいことをやらかしてみたい。毎日非番の時間、僕は時空探偵犬になって、余生を時空の旅をする、かっこいい犬になることが夢だった。彼が現れるまでは。


 彼の名は、マイケル。年老いた孤独なおじいさん。彼は今の飼い主のように、盲目でもなければ、耳も聞こえる。健康そうに見える大柄なおじいさん。だけど、どうしてだろう。彼は悲しそうな眼をしている。僕がご主人を誘導して出かけると、ふと帰り道の公園を見ると、一人マイケルおじいさんは、ベンチに座って、悲しそうにしている。そんなある日、ご主人が、公園で休もうと、僕とベンチに向かうと、いつものように、彼は日向ぼっこしながら、寂しそうにしていた。僕とご主人が、ベンチに座ると、彼は僕を見ながら、ご主人に話しかけてきた。

「かわいいワンちゃんですなー」

ご主人はこう答えた。

「うちのパートナー犬、チャーリーは、今年で、盲導犬を定年でねー。誰か良い人と余生を、楽しく過ごしてもらえるといいのですが」

僕はマイケルの顔をまじまじと見た。

「それなら、私に彼を譲ってもらえないでしょうか。私はマイケルと申します」

「そうしてあげたいのですが、マイケルさん。盲導犬協会に一度この子を返して、そこに登録している里親じゃないと、駄目なのですよ」

「そうですか。私は、身寄りがなくて・・・・」

僕は、ご主人とマイケルと名乗りでたこのおじいさんの顔を行ったり来たり見た。

「一度里親として、盲導犬協会に登録してみてはいかがですかな?」

ご主人は彼に言った。

「しかし、それではこの子の里親になれるかどうかは、分かりませんよね?」

僕は、なぜ彼が僕をこうも必要としてくれるのか、突然昨日のことのように思い出した。そうだ! 夢で見た新しい飼い主は、彼だった。きっとあのマイケルが、時空を超えて、僕を迎えに来てくれたのだ! こうして僕は、彼にまたもやお世話になる。今日も顔晴(かおは)れ。顔晴(がんば)れ! おはよう!

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