第3話 約束を胸に ②

ある夜中、ドゴォォォォォオオ!!!という爆音が聞こえると同時に宿舎が少し揺れる。

「な、なんだ!?」

シンは飛び起き、すぐさま上着を羽織る。

部屋を出てカミヤの様子を見に行くと、パンイチの状態でベッドで寝ていた。

シンはカミヤを叩き起す。それと同時に館内放送が入る。

―――至急!至急!訓練兵へ告ぐ!すぐさま戦線へ移動し至急援護を頼む!繰り返す!すぐさま――――――



 ―――――――――――――――



外は騒がしい。榴弾砲だったのかここまでは直撃はしてないようだ。だが、多少の損傷は出ているようだ。

カミヤとシンは準備をし外へ出る。

順次、トラックの荷台へ乗り皆戦線へ向かっている様子だ。

カミヤとシンも荷台へ乗り込み向かう。



 ―――――――――――――――



着いた頃にはほぼ壊滅寸前。ギリギリ保っているくらいだ。

急いで状況確認をし銃を構える。

突撃。

砲声、銃声。

皆、砲撃に飲み込まれまいと走る。

シンは走る。足は震えている。手も同じだ。

何処からか聞こえてくる。横目に見ると馬に乗り、指揮官らしき人がいる。

「進めぇぇえ!!!相手の白目と黒目見分けられる距離まで近ずけぇ!訓練を忘れるなぁぁぁ!!!」

生きているか、死んでいるかさえ曖昧な……その地獄にシン達はいる。この時のために鍛え抜いた肉体も、夢に出るほど繰り返した訓練も、なんの役にも立たない。ただ、弾が当たるかどうかの運試し。

「う、うわぁぁああ!!!」

銃声。

逃げた味方兵が撃たれた。

もう一度大きく、声を上げる。

「進めぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!!」

鳴り響く銃声の中シンは走る、まともに当たるはずもない銃を持たされ。

「はぁっ、はぁっ……」

息が乱れる。

俺はここで撃たれて死ぬのだろうか、だとしたら呆気ない人生だったな…



 ―――――――――――――――



殺し合う両国、砲弾の衝撃により飛ばされ横たわるシン。

右腕の感覚がない。

空を仰ぐように見る。

綺麗だな…俺このまま死ぬんかな…死にたくねぇなぁ……短い一生だったなぁ……

シンはそのまま意識を失った。


何時間経ったのだろう。シンはベッドへ寝かされていた。明らかに建物の天井じゃない、恐らくテントだろう。

「何処なんだここは……」

看護師らしき人がテントに入ってきた。

「あら、シンレイさん起きられたんですね。」

「はい……今、丁度。」

「そうなのね、先生呼んできますのでちょっとまっててくださいね。」

先生ーっと看護師が呼びに行った。

戦況はどうなのだろう。あの時、俺たちの隊はどうなったのだろう、壊滅してしまったのだろうか。それじゃあ、なんで俺は生きているのだろう。疑問が積もる。

ふと、体を起こそうとした。何故だかバランスが悪くて、体を起こすことが出来ない。そして右腕に違和感を覚えた。

「すまないね、待たせてしまったかな?」

看護師の言っていた医師が入ってきた。

シンはもう一度起き上がろうと試みていた。

ガタンッ!

シンはバランスを崩し、ベッドから落ちそうになった。

すぐさま、看護師と医師が駆け寄って支える。

「シンレイ君は今、右腕が無いのだから無理したらダメだよ。無理して怪我でもしたらどうするのさ。」

「………」

シンはあの時の砲撃により右腕を負傷し、壊死の進行を止めるため切り落とされた。

「なんで、俺の腕ないんすか…」

「それは、僕がちょんぎったからさ☆」

「今、さらっとすごいこと言いましたね。」

「だって、切り落とさないともっと壊死が広がっちゃうからね。義手を付ければ生活に支障は出ないと思うよ。」

「それはどうも…」

空気が重い。

シンの記憶がフラッシュバックする。

「カミヤは!?カミヤはどうなったんだ!あの、金髪のやつだよ!」

「カミヤって、カミヤ・ヴァイシュタルさんのこと。。。かな。。?

彼はもう息を引き取ってしまったよ。。。残念ながら、もう彼はこの世にはないい。。。」

重かった空気が更に重くなったように感じる。

「他の…訓練兵達は…?」

「訓練兵の方々は殆ど生き残っておりません…」

看護師の女はそう言う。

「なんで…なんで、死んじまったんだよ…カミヤ……」

沈黙が流れる。

「先生…俺、戦場に戻りたいです……」

「そんな体で何を言っているんだい…君はもう戦えない体なんだ。その右腕がない状態でどう戦うって言うんだい…」

「先生、なにか方法は無いんですか?」

「あるにはあるが…君に教えることはできない。力になれなくてすまない…」

「だったらそれ教えて下さいよ。お願いですよ!先生!」

「………」

シンは医師の肩を大きく揺さぶる。

「お願いです!」

「このことはまだ口外禁止なんだ…話すことはできない。」

「…どうか、お願いします。教えて下さい…」

先生は少し考えた後、シンの前で腰掛け、話し始めた。

「分かったよ、君がそこまで言うのなら…、ちょっと二人にしてくれないか?」

看護師をテントの外へ出す。

「これはまだ口外禁止事項だ、だが君には今回だけ特別に話そう。」

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神機 -ジンキ- 御劔湊 @MTRGMNT

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