第4話 それぞれのやり方
美白ちゃんの好きな色、美白ちゃんの好きな持ち物は分かっている。
「美白は今も美白だよ」
「砂奈ちゃんと一緒になれた?」
「一緒になれたよー、もう脱落したけどね」
「でもね、今のままでは美白ちゃんは黒、と告発する!」
「黒?もう砂奈が言ったよ」
「でもあたしも黒だと思うから」
「それなら、日華生徒会長の好きな物は筆箱だよ」
そうだ、あたしの好きな物は筆箱だ。あたしはこのゲームに勝利しない。あたしは美白ちゃんに足りない色を付け加える。
「そっかー、生徒会長から見ても美白は黒かぁ」
「あたしの好きな色は緑、美白ちゃんの好きな色は…その真ん中に入る色こそ美白ちゃんになってほしい色だよ、砂奈ちゃんも好きな色は黄色、もし黄色になれたら砂奈ちゃんを知れるかもしれないよ」
あたしは白い枠から黒い枠へと移動した。Aクラスとあたし個人は違う。なんだ、ここにいる人みんな演劇なんてしたくなかったんじゃん。
「だからあたしは黄色と告発する」
「あーあ、美白は何回も答えを言ってるのに、みんな言ってくれないんだねー。生徒会長の勝ち方は敗者を生まれ変わらせる勝ち方かー、全員に負けた気分だよ」
「日華は緑だよ、これで日華生徒会長も脱落…」
「君たちのほうがよっぽど本当の勝ち方を知っているじゃないか。自分に正直であることを曲げない勝ち方の羽衣。暴かれる前に自ら暴かれない位置に立つ勝ち方の砂奈さん。最後に取り残された一人に希望を与えて勝ちあがる日華生徒会長。美白のボロ負けだねー。羽衣には暴かれるし砂奈さんは暴けなかったし生徒会長には借りができたし、雄希の心理ゲームに陥れられたかー」
「君が負けるところは見たことはないにしても勝ってそんなに落ち込むところは初めて見たよ」
「美白はこのゲームで負けたんだよ、このゲームの趣旨を忘れたのかなー。文化祭で演劇をすること、ここにいる参加者は全員演劇はしたくなかったんだよねー」
「君が屋台から演劇に変えたんじゃないか?それに金も君のものだ」
「変えたのは美白だよ、でもこの学校にまだ美白を信用している人間がいたなら話は別だよー、まだ美白を信用していた砂奈さんより金を取ることになるんだからねー」
「よくわからないな」
「それだから雄希は美白に勝てないんだよー、美白を負けさせるゲームを作るのは得意なようだけれどねー」
「それにしても羽衣の好きな物ならまだわかっても好きな色をどうやって分かったんだい?」
美白ちゃんは急に携帯を弄りだしていたあの時、動画を撮っていたんだ!美白ちゃんは雄希君の目を拡大させて屈折した文字を覗き見ていた。特に羽衣ちゃんのところにいる時間は長かったからその時間は十分にある。美白ちゃんは羽衣ちゃんの答えを知っている状態で参加していたんだ。
美白ちゃんの本性は白で好きな色は赤、好きな物はノート。でも実際は帽子で青だったんだろうなぁ。白という選択肢があったらどうなっていたんだろう。
「表上美白が勝ったことに一応なるからねぇ、演劇かぁ…」
「残りは屋台と、第二希望が演奏か、第三希望がレストラン、レストランはできるのかい?」
「まあレストランっぽいことならできるんじゃないかな?表上二位のあたしはどこでもいいけどね」
「なら私は演奏がいい…」
「まあ学級委員は僕だからね、何とか演奏に持ち込むよ」
「私は学級委員ではないので何とも…」
「じゃあAクラスと羽衣ちゃんのクラスは屋台かレストランで決めるねー、あたしも生徒会長であって学級委員ではないから」
「美白は学級委員をものにしてるから演劇で問題ないよー」
「うん、そうしよう!」
美白ちゃんの手にかかればDクラスは美白ちゃんの支配下なのだろう。確かに今回のゲームで美白ちゃんの心を知れた気がする。美白ちゃんは実は優しい、信用されたい生徒なんだ。あたしは美白ちゃんの友達になりたいと思った。
私は一匹狼なんて言われてるけど美白…こいつには心を許していいような気がした。私はこいつに歯向かうことはないだろう…
美白さん、この方は自分のことに気づいてもらいたかった。だから私に当てさせようとしたのですね。私はこの方を支えていこうと、そう決意しました。
美白、僕はまだまだ学ばなければならないということか…僕は君に勝利するのではなく君という存在を目指すよ。
ふぅ、金は受け取ったし今回は美白も収穫だったよー。生徒会長や一匹狼、クラスの中心の人物、ついでに雄希、相手にとって不足なし。彼女たちの心を美白に開かせることが少しでもできたなら今回の演技は成功かなぁー。これが美白の勝ち方だよー。こうやって少しずつ生徒をものにしていこうかなー。
「今回の勝ち方は美白が負けたように相手をおだてて弱みを見せる演技をして相手の心を開かせる、さーて、今度のゲームではどんな演技をしようかなー」
心理ゲーム @sorano_alice
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