第3話 正直な嘘

 正体は白と黒だけではない。もしかすると好きな色、好きなもの以上に難しいのではないだろうか。

 あたしは外してしまったけど白と黒以外の正体があることがわかってしまった。あたしと砂奈ちゃんは驚いている。多分同じことを考えてると思う。


 美白ちゃんは全く興味がないのか携帯を弄りだした。


「勝負はついたねぇー」


 美白ちゃんが降参か!美白ちゃんが寝っ転がってスマホを弄り始めたー、やる気なし!美白ちゃんが運をものにできなかった、羽衣ちゃんがこの局面を支配しているってことかな?ということは美白ちゃんも白か黒?でも今度間違えると好きな色か好きな物ばらされるー!


「美白、どうしたんだい?今回は降参かい?」


「べっつにー、美白が降参したことあったー?」


「負けず嫌いだねぇ、まったくやる気がないじゃないか」


「まあいいけどさー、いつまで羽衣の机に突っ立ってんのー?司会者はステージに戻らなきゃねー」


「はぁ…一人で三人相手にできるかな?」


「確率的に25%はあるよー」


 美白ちゃんと雄希君はすごく仲が悪そうだなぁ。でも羽衣ちゃんの席に行っていればあたしに勝ちは見えたのに!


「なら一つくらい当ててみるんだね」


「自分のゲームになると調子に乗るねー、腹が立つなぁ。わかったよー」


 雄希君の挑発に美白ちゃんはまんまと引っかかってしまった。審判としてどうなのかな?


「じゃあ羽衣に好きな持ち物を告発するよ、羽衣の好きな持ち物は矢だねー」


「……」


「あれぇ、正解なのかなぁ?」


「そ、そうだよ、正解だよ。なんでわかったんだい」


「そんなの羽衣は弓道部だからねー、誰でもわかるでしょ」


 え?誰でもわかるの?あたしわからなかった!

 でも好きな色、うーん心理を問われるね。好きな持ち物バレちゃいそうだなぁ。こんなことなら矢にしとけばよかったなぁ。でも被ったらどうなるんだろう?

 急に集中狙いされていた羽衣ちゃんが声を漏らした。


「そうなんですよ、でも、私は嘘しかつけないんですよ。白でも黒でもないのですから。そもそも私は、クラスとしては演劇部に立候補するでしょう。でも私個人としては立候補しませんね、これが事実です」


 そういうと羽衣ちゃんは黒い枠の方に移動してしまった!羽衣ちゃん自身は特に立候補したくなかったのかー。


「このゲームで真実がわかっていくねぇー」


 完全にやる気をなくしたかと思ったら羽衣ちゃんの好きな持ち物を的確に当てていく美白ちゃん。でも羽衣ちゃんの色には触れない。この勝負は美白ちゃんと羽衣ちゃんの一騎打ちかな?そうなると降りなきゃいけないのかー。


「キリがないからこれ5分ずつ答えていくとかしないと長期戦にならない?美白さっさと終わらせたいんだけどー、美白の狙いは金だから」


 このゲーム金がつるんでるなぁ。美白ちゃんと言えば金だしねー。金のためならどんな手段でも使うからねぇ。


「まあ、生徒会長と砂奈さん争わないと負けちゃうよー」


 それだけ言うと携帯を弄りだした。多分急がせる作戦だ!


「あーあ、美白も急がなきゃねー。うーん、羽衣ちゃん告発しようかなー」


「美白らしいね、何をするんだい?」


「好きな色だよ、青と迷ったんだけどねー、でも草原が好きそうって感じだったからなぁ、黄色もあり得るけど赤は血の色だし確実にないねー」


「で、好きな色は結局何色なんだい」


「赤は確実になければいいねー?草原の緑かなぁー」


「緑か…そうだ、羽衣の好きな色は緑だ、なぜだ…」


 羽衣ちゃんが支配していたにも関わらず羽衣ちゃんは切り札の本性の色だけになってしまった。これが美白ちゃんの直観ってやつ?

 黙っていた砂奈ちゃんがやる気を出したのか尋ねる。


「雄希…ヒントくらいないとわからないだろ…」


 やばい、キレさせてはいけない!


「そ、そうだね」


 美白ちゃんの机に向かって確認する。最後にあたしの机に向かって確認する。


「ふむ、青を選んだ人と帽子を選んだ人はいないよ。さらに緑を選んだ人は二名、筆箱を選んだ人は二名だね」


「帽子がいない…?」


 砂奈ちゃんが美白ちゃんを見ながら言った。ヒントがなかったら砂奈ちゃんが暴露されるところだったよ。


「そうですか、それだけわかれば十分です、ようやく私は私のこのゲームの答えを見つけられたような気がします。美白さん、私の色、すでに知ってますね?それに私は確実に真相を探ることなくこのゲームから抜け出せる方法を見つけました。私の最初で最後の告発です」


 ここで羽衣ちゃんが告発してくるとは、いったい誰が。


「私は隠し通すのから逃げるために嘘を吐く。美白さん、貴方の好きな色は青です」


「青と帽子を選んだ人はいないと…」


「そうですよ、雄希さん。私はゲームで得た当選で出し物を決めたくないから初めての自らの嘘を吐いたんです」


「……ははっ、すごいねぇ、負けた気分だよー。確かに美白はこのゲームでは好きな色は青にはしなかったよー。でもゲームじゃなかったのならこの中では青だっただろうねー、ある意味本心を暴かれた。正直な嘘にねー。本心を暴かれたという意味では美白の負けかなー」


「最後の一つ、残ったのは本性の色だけ、答えは赤だよ」


「緑を暴かれた時点で赤を強調していた。ああ、そういうことだったんですね。貴方は貴方なりの勝ち方をしたかったのですね、もう、私には手遅れでした。私にできるのはここまでです」


「そこまで気づかれるとはねー、君には素質がありそうだ。冗談抜きで雄希以上にね」


「くっ…勝手に意思疎通して…よくわからないけど羽衣は最下位ということになってしまったよ」


「ええ、しかし楽しめましたよ。美白さんをしれましたから」


 赤を強調していた。そうか!その時点で羽衣ちゃんが赤って気づいていたのか!


A柏木日華   黒   ???(緑) ???(筆箱)   

B天上砂奈   白   ???   ???

C春日部羽衣  赤   緑     矢  (脱落)

D成瀬美白   ??? ???   ???



 意外にも運をつかんでいたと思われた羽衣ちゃんが脱落して最下位となった。

 整理してみよう、帽子と青を選んだ人物はいない。そして緑を選んだのはあたしだ、あたしと羽衣ちゃんだ。どちらかが黄色、どちらかが赤ということになる。

 さらに筆箱を選んだ人は二人、矢を選んだ人は二人ではなく羽衣ちゃんだったため矢を選んだ人物はもういない。あたしが筆箱ということは筆箱かノートをどちらかが選んでいる。

 美白ちゃんの色、白か、黒か、赤か、それ以外か。


「美白もさー、試したかったんだよねー。うちも正直者になってみよ」


 美白ちゃんは急に白い枠から黒い枠へと移った。その行動は美白ちゃんが黒だから?それとも演劇をしたくないってこと?美白ちゃんは息を吐くように嘘を吐く人物だ。その行動は本当だと思わせる作戦なのかもしれない。

 砂奈ちゃんがその作戦に乗ったのか美白ちゃんを告発した。


「美白は黒…」


「砂奈の好きな色は黄色だよ」


 それは美白が黒でないことを意味する。

 なぜか美白ちゃんは悲しげだ。それと同時に嬉しげでもある。


「そうかー…君は、砂奈さんはまだ美白を信用してくれる人物だったのかー。まさか砂奈さんに信用されてもらっていたなんてねー」


 美白ちゃんのその言い方は侮辱ではない。どこか申し訳なさそうなそんな気持ちだ。


「もうこの学校の人間は誰も美白を信用してないかと思っていたよー、砂奈さんとは友達になれていたかもしれないのかー、……ははっ、何で美白がダメージを受けるのかなぁ」


「私は一度くらい美白を信用してみたかった。でもそもそもこのゲームに私が勝っても私は何の得もしない…でも一つくらい美白は暴きたい…美白の好きな色は羽衣が暴いた、だから私は…美白に告発する…もし、美白がこの答えではないのなら美白は暴かれるのを待っている…筆箱を選んだのは二人、帽子はいない…私は筆箱。もし、美白がノートなら、すでに答えがわかってる…もう矢を選んだ羽衣はいないから…私は美白という嘘つきの真理を知れた。だから私は敢えてノートと答えず筆箱と告発する…私は美白か生徒会長に暴かれる前に美白に筆箱と告発する」


「砂奈、そう砂奈が筆箱だよ。これで砂奈は脱落だね」


「ふーん、勝ち逃げとはずるいなぁー、美白は砂奈さんにも負けたのかー」


「何を言っているんだ?美白」


「雄希は本当の意味を分かってないようだねー、砂奈さんは誰にも暴かれることなく脱落した。これが天上砂奈という人物の勝ち方だよ。砂奈さんにはリベンジしないとねー、今度こそ一つくらい暴いてやる」


「ふん…できるものなら…」


A柏木日華   黒   ???(緑) ???(筆箱)   

B天上砂奈   白   黄色    筆箱 (脱落)

C春日部羽衣  赤   緑     矢  (脱落)

D成瀬美白   ??? ???   ???


 美白ちゃんはあたしの答えをもう知っている。今度はあたしなりのやり方であたしが美白ちゃんの色を暴く番だ!


 

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