第2話 動くもの、動かぬもの
あたしは柏木日華。昨日は散々呆れていた生徒会長だ。よくわからない手紙を突きつけられ仕方なく9時に体育館に向かうことにした。なにか面倒ごとになってたからあたし責任取らされるからね!
いつもの体育館と違うなぁ。まあいっか!入ってみよー!
「なにこれ!」
まず目に浮かんだのは体育館のほぼ中央に人10人は入れそうなくらいの九時の方向に白い丸いマス、三時の方向に黒い丸いマスその先にはCクラスの春日部羽衣ちゃんだ!不思議そうにしている。机もそのマスを囲むように四台離してセットされているけどなんだろう?
「羽衣ちゃん?」
「あ、日華生徒会長、今日ここで何かが起こるみたいでして、あの手紙は生徒会長のですか?」
あの手紙?あのよくわからない手紙でここに来たんだった。
「助けてくださいって何かあったのですか?」
ん?そんなことは書かれてなかったような。
「何の話?」
「生徒会長が送ったのではないのですね?」
「あたしは知らないよ?」
「そうですか、一体誰が…」
後ろから足音が聞こえる…誰?黒いジャケットを堂々と着てきたのはまさかの天上砂奈ちゃんだ!もしかして、砂奈ちゃんにあたしたちやられる?これ、やばくない?めちゃくちゃ睨まれてるんだけど…
「えーと、あたしなんかしちゃったかなぁ…」
「は…先生に呼ばれたんだけど…」
何かみんな言ってることが違うぞー!
さらにポケットに手を突っ込んで探偵みたいな容姿している白髪のこんな人いたっけって思ったら成瀬美白ちゃんだー!美白がいるところ波乱あり!と言われるほど有名だ。ということは何か嫌な予感が…手を振ってきた。
「おー、日華と羽衣と砂奈…さんじゃないかぁ」
「手紙送ったのは君かな?」
「僕だよ」
突如体育館ステージから現れるのは真島雄希君。この人は裏でゲーム部とかよくわからないことをしているちょっと危ない人だー。雄希君と美白ちゃんが揃う、さらには一匹狼の砂奈ちゃんまでいる。嫌な予感しかしない!
「役者はそろったね」
「貴方ですか?助けてくださいって誰を襲ったんですか?」
「先生は…?」
「誰も襲ってないし先生から今日だけ体育館を使っていい許可を得ているよ、美白の嘘で騙してね」
やっぱりこの二人グルかー!生徒会長としてちょっと悪ふざけが過ぎるくらい言っとかないとね。
「あのねぇ、悪ふざけに付き合ってる暇はないの」
「悪ふざけじゃないよ、僕は生徒会長のためにこのゲームで一位になったクラスが演劇をするという代表者を呼んだだけだよ」
確かにあたしはAクラス、砂奈ちゃんと雄希君がB、羽衣ちゃんがC、美白ちゃんがDだ!
「でもちょっと待って、不公平じゃない?Bクラスだけ二人いる上に美白ちゃんも内容知ってるよね?」
「僕は出ないし美白にゲームの詳細を教えていないよ」
よく砂奈ちゃんを呼べたなぁ…
「ある意味美白、有利なのかもねー。今日この日、ゲームをするためだけに屋台から演劇に学級いいんちょ使って訂正させたからねー」
「黒幕は君かー」
「でも協力戦なのか、スポーツなのか、喧嘩なのか知らないよー。あー、美白喧嘩弱いからなー、喧嘩なら砂奈さんに投了だよー。まあいいや、席があるし座るよ」
「まだ座るのは早いよ美白、その席から既にゲームは始まっている」
本当に知らなさそうだけど美白ちゃんの演技とかじゃないよね?この人息を吐くように嘘ばっかりついてるからなぁ。
「12時の方向、つまり僕のいる体育館ステージ側の席を北としよう。このゲームは運も作用している。実力だけじゃなくてね」
「まさかだけど席で勝敗決まるとかそんなのフェアじゃないよー」
「勝敗は決まらないよ、でも立場が決まる、かな」
「ははーん、美白わかっちゃったかも、麻雀ねー。よくするからね。親で勝たせてもらうよー」
「麻雀知らないんだけど…」
「麻雀ではないんだ、とりあえず好きな方角を教えてほしい」
「美白最後でいいよー」
「えっと、特にありませんが…」
「何でもいい…早く帰りたい…」
「早くしてくれないかなぁ」
「なら生徒会長、方角じゃなくても数字でもいい、12か3か6か9でね」
「何でもいいよ、じゃあ3でいいよ」
「ちなみに僕はシャッフルしたから中身を知らない、絶対に見せてはいけないよ、勝って演劇をしたいのならね。次は砂奈だよ」
「じゃあ大きい12…」
「北だね、僕に一番近い席だね。次は羽衣だよ」
「えっと…では、南で」
「砂奈の向かいの席だね、美白は生徒会長の向かいの席だ」
「はいはーい、で、席もっとくっつけていいかなー。話しづらいんだけど」
「駄目だよ美白、自分の正体がバレてしまうからね」
「ははーん、隠す系か、金はもらったねー」
「ちょっと待って、賞金かかってるの?」
「いやいや生徒会長、こっちの話こっちの話。とりあえずこの箱開けていいかなー?」
「いいよ、見せないでね。僕はあくまで中立だ。砂奈の正体は見えているけど言わないよ」
「仲間同士だからねー」
あたしは机にあった箱を開けてみた。ちなみに机は白と黒の円から教室から教室の端の距離まで離れているためまず見えない。
ふむふむ、あたしは黒か。よくわからないけど黒い丸の正体がわかった気がする!
なになに?黒の役目は白を倒す。なるほど!チーム戦だ。あたしともう一人黒がいて白が二人いるんだ!美白ちゃんが黒だったらいいなー。
次に好きな色を選んでください。
赤と青と黄色と緑かぁー。信号かな?赤は選んではいけない気がする。黄色も危ないねー青か緑。緑かな!
次に好きな持ち物を選んでください。
矢と帽子と筆箱とノート。筆箱かノートかなぁ。筆箱でいいかな、書くことないし。
とりあえず机にあるのは黒と書かれた紙。緑、と筆箱にペンで丸を囲った用紙。
それと書き終えたら演劇に立候補する人は白い丸の枠に、演劇を立候補しない人は黒い丸の枠に、と書かれている。
もちろんあたしは白い丸の枠に行った!美白ちゃんも羽衣ちゃんも白い枠に行った!砂奈ちゃんは演劇をする気がなかったのか黒い枠だ。
白い枠にあたしと美白ちゃんと羽衣ちゃん、黒い枠に砂奈ちゃんが集結した。
「なるほど、演劇はしたくなかったとなると第二希望のやつかな?では始めよう」
あれ?始まってなかったの?
「この中に嘘つきがいる。自分の正体と同じ色にいない嘘つきが間違いなく一人以上確実に存在する」
ん?つまり演劇を立候補するかどうかはどうでもよくて白い枠と黒い枠は自分の正体の色?あたしは黒だけど白い丸の枠に入っちゃってるね、嘘つきはあたしってこと?
「このゲームは自分の正体の色、好きな色、好きな持ち物すべてが当てられた時脱落が決定する。何度でも当てに行く、つまり告発できる。例えば生徒会長が白、とかね?ただし間違えれば間違えた部分が暴露される。生徒会長は実は黒だったのに白と美白が間違えて答えてしまった場合間違えた正体の色だけバレることになる」
「嘘つきはどうなるんですか?」
「このゲームは嘘が基本だよ、嘘つきと組むもよし正直者と組むもよし、嘘を吐くのも良し」
「これは美白のもらいかなー」
「今回は一対一じゃないからね、分からないよ。このルールを聞いて再度違う色の枠に入りなおすことも可能だ。ただし一回だけね」
誰も動かない。あたしは動きたいけどここで動いたらあたし黒ってバレるじゃん。つまり砂奈ちゃんは黒?羽衣ちゃんと美白ちゃんが白?でも色関係ないんだよね。正体の色がわかったところで好きな色と好きな持ち物まで当てないといけないんだから。
「もう始まってんのー、告発とかー?」
「始まっているよ」
強者の余裕なのか美白ちゃんが真っ先に動き出すと思ったけど傍観だ!
「意見くらいいいよねー?」
「いいよ」
美白ちゃんの意見か、参考になる!
「性格的に羽衣は嘘吐かなそうだよねー」
「美白、羽衣を色で告発するのかい?」
「いや、しないけどー?」
「美白らしくないじゃないか、臆したのかい?」
「そんな挑発には乗らないけどねー」
「じゃあ羽衣を告発…」
もう面倒くさいのか砂奈が告発した。
「色と好きな色と好きな持ち物があるよ」
「色…羽衣の色は白…」
「僕も知らないからね、羽衣の机に行って確認してくるよ」
雄希君は羽衣ちゃんの机に行って確認し始めた。
「ふっ、なるほど。砂奈は白だよ」
あれ?羽衣ちゃんじゃなくて?
「羽衣ちゃんでしょ?」
「違うよ、砂奈は間違えたから砂奈の色をばらしたんだよ」
「え…」
まさか、まさかあの羽衣ちゃんが嘘を吐いているなんて。
「雄希?さっき笑ったねぇ?」
「それが何だい、美白」
「何でもないよ、つまりこのゲームの親は羽衣かー」
砂奈ちゃんは羽衣ちゃんを告発して間違えた。羽衣ちゃんは白ではない。残ったのはあたしと同じ黒。このゲームは自分と同じ色の人と協力するゲームではなかった。つまり羽衣ちゃんの黒は確定した。ごめんね羽衣ちゃん。文化祭の、Aクラスのためなんだ!
「羽衣ちゃんに告発するよ、色は黒!」
「わかったよ、生徒会長の色は黒だよ」
そうか、あたしは根本的に勘違いしていた。このゲームの正体は白と黒とは一言も書かれていない。もしかすると美白ちゃんよりも羽衣ちゃんのほうが天敵かもしれない。それ以上に、美白ちゃんも白や黒ではないのではないだろうか。
「さらに二人はもう色がバレたから色の正体を告発する権利を失ったよ、どうしても使う場合今度外すと好きな色か好きな持ち物が明かされるよ」
A柏木日華 黒 ???(緑) ???(筆箱)
B天上砂奈 白 ??? ???
C春日部羽衣 ??? ??? ???
D成瀬美白 ??? ??? ???
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